修士論文要旨 遠藤清信

論文題名:P2Pは発展するか

 NapsterGnutellaに代表されるPeer-to-peer(以下P2P)アプリケーションは、インターネットが本来もっていた特徴をそなえており、インターネットの潜在的な力を発展させる可能性をもつ。本論文はインターネットの設計思想、現状、またP2Pの特徴を理解し、その後にP2Pの発展の要素を技術,利用形態,ビジネスモデルとして捕え、P2P発展についての考察をおこなう。

 P2Pとはコンピュータ同士が直接コミュニケートする技術であり、ネットワーク上のユーザが直接記憶装置をオープンして検索及び交換を可能にする。また情報提供のサーバと利用するクライアントが同一のアプリケーションで統合され、ネットワークに接続した時点で情報の利用者が情報の提供者になれる。専用のサーバ構築の必要がなく、情報発信のための専門知識と費用を必要としない。

 インターネットは世界中のコンピュータをつなぐコンピュータ・ネットワークであり,ネット上のコンピュータはほかのコンピュータと交信し情報や知識を共有し交換できる思想を持つ。サーバ/クライアントとしてのコンピュータはハード的、ソフト的に異なる点がなく。それがインターネットの特徴であった。WWWの発展により、効率的で信頼のあるシステム構成が求められ、サ−バ/クライアントの機能が明確に分かれた。さらに常時接続が出来ないユーザのために常に情報を提供できる機能が求められ、これらの理由からインターネットがP2P的性格を失っていった。

 しかし、インターネットの普及、ネットワーク環境及びコンピュータの処理能力の向上などにより、コンピュータ同志のコミュニケーションが出来る環境が整ってきた。いまインターネットの発展過程でサービス提供の最適化をめざし固定化されてしまったサ−バ/クライアントというpeerの役割分担にも疑問がもたれている。また、Web全体ではサイトが相互にリンクされているのは全体の1/4にすぎず、1/5に至っては全くリンクされていない事実もあり、ネットワーク上での全てのpeerをつなぐ分散型のP2Pコミュニケーションが注目されるに至った。

P2Pの発展を考察するにあたり以下に3つの要素を検討した。

 技術については、ネットワーク環境はよくなってきているが依然としてダイヤルアップ・ユーザーが多いという現状、また大域幅が狭い実態がある。PPはネットワーク上のpeerpeerがつながりネットワークを形成するためダイヤルアップ・ユーザーが多いとネットワークのパフォーマンスが悪化する。

 利用形態だが、社会におけるジレンマ研究では大規模な匿名のグループにおいて自発的な協力を生み出すことが困難であることが示されており、P2Pネットワークでも例外ではなくフリーライディングは公共において典型的な行動様式であると考えざるを得ない。しかし、自発的な協力に依存する分散システムのP2Pにおいて、多くのフリーライディングはネットワークの崩壊につながる。

 ビジネスモデルであるが、P2Pを事業のコアにしている企業が現在82社ほどある。しかし、明確なビジネスモデルを持ち、実績をあげている企業はまだない。コンセプトおよび技術に対して投資家からの資金の調達に成功しているが、現在P2Pのビジネスでの成功は予測することは困難である。

 3つの要素の検討からP2の発展を展望すると、コンセプトおよび技術は優れているが、ネットワーク環境が不十分であり、フリーライダが多く、ビジネスとしての発展は未知数であるといえる。短期的には、ネットワーク環境が整い、モラルが高く、収益を考えない環境での利用、企業や研究所、大学などのエクスクルーシブなネットワークで発展する可能性がある。長期的にはダイヤルアップ・ユーザによるネットワーク・デッドエンドの問題は、ダイヤルアップ・ユーザが接続するために高速のプロキシ機能の採用が有効である。フリーライダ問題に関しては、コンテンツの提供にたいしてデジタル通貨などのインセンティブの供与が有効であると考えられる。

 今後、技術,利用形態の問題が解決できる可能性があるためP2Pは発展する可能性がある。しかし、今のところビジネスモデルを描くことができず、大きな発展は未知数である。