伝統的な遠隔教育−通信教育
伝統的な遠隔教育として、「通信教育」がある。既に述べたように、空間的な「隔たり」のある遠隔教育のなかでも、時間的な「隔たり」を持つ通信教育は今まで多くの者に認知されてきた学習形態であると言える。
一般に、通信教育と呼ばれているものには二つの種類がある。
第一は、「大学通信教育」と呼ばれているものである。これは1947年に正規の大学教育課程として始まったものである。学生は、印刷教材により独習し、定められた課題によって学習成果を大学に報告し、添削指導と評価を受けて学習を進めていく「通信授業」を基本に、スクーリングと呼ばれる「面接授業」や「放送授業」の組み合わせによって各自で学習を進めていくというものである。現在、大学通信教育は、全国の16大学、10短期大学により実施されており、およそ25万4千人がそれぞれの学習動機に応じて学んでいる。既に述べたように、大学に通学できない人々に対して大学教育を開放した大学通信教育制度は、大きな役割を果たしてきたと言える。 (財)私立大学通信教育協会によって行われた「第5回大学通信教育学生生活実態調査」によると、「大学通信教育はどういう点が不十分な制度か」という質問に対して、回答者4,835人のうち約45%の者が「強い意思が必要である」という項目を挙げている。大学通信教育は一般に自立学習形態の遠隔教育であり、通信教育用印刷教材を通して学生は自ら思考指導を工夫せねばならず、それは孤独で困難な学習の繰り返しである。さらに、対面による教師の指導の機会が少ないということもある。結果として、そのような学習形態についていけずに、学習を断念する者も多く、結果として学習の継続率が低くなってしまうことがデメリットである。 通信教育の主目的は、学位の取得である。このことは、前述の調査において約90%の者が「大学卒業資格を望んでいる」という回答をしていることからも明らかである。学位を取得するために、孤独で困難な自立学習が要求される学習形態が大学通信教育であると言ってよい。
第二は、「社会通信教育」と呼ばれているものである。広義には、文部省による「大学通信教育設置基準」を満たした大学が行う通信教育以外のものの総称である。資格取得のためのものから趣味実用的なものまでとその範囲は広い。さまざまな種類のものが存在している。それらは、誰もが思い立ったら気軽に始められるものである。
どちらの場合にも言えることは、通信教育は通学の場合に比べてコストがかからないということと、自分の好きな時間をつかってランダムに学習を進めることができるということである。このことが社会人、なかでも職業人を取り組み易くするインセンティブとなっている。しかし、どちらの場合も、時間的・空間的な制約のある社会人がやむを得ず通信教育という形態を選択していることは偽らざるところであり、できうるならば通学することでより効果的な学習を行いたいと考えているのではないだろうか。
大学通信教育に関しては、学習の形態が自立学習を基本としていることからなかなか難しいことだと思うが、社会通信教育に限って言えば、教育内容にもよるが、直接の対面授業と同じような環境の提供により、社会人が求めている効果的な教育を享受したいというニーズに応えることができるのではないかと考える。すなわち、社会人には、潜在的な学習ニーズとして「即時性」、「双方向性」、「対面性」という事項があるのではないだろうか。「即時性」とは、その場で疑問や知りたいことを解決できることを意味し、「双方向性」とは、お互いの意見交換を同時進行的に行えることを意味し、「対面性」とは、相手の表情をうかがいながら行動を起こすことができる、ということである。
このような条件を満たしうるものとして考えられるのは、仮想教室形態の遠隔教育、すなわち、情報通信技術の活用による遠隔授業の余地があるのではないかと考えられるのである。