閉ざされてきた企業内教育


我が国における生涯教育の特徴は、教育の内容が教養・趣味・娯楽という分野に偏っていることである。それに対して、欧米の生涯教育政策は、職業に関連するものがその中心となっている。 一般に職業的な生涯教育は、主として成人の男性が中心である。そして、その教育は大学や行政よりも、企業の側によって提供されることが多い。大学と企業との間で教育内容の連動が弱いのは、大学が職業世界に開かれていないためだけではない。企業内教育も同様に外の世界に開かれていないからである。閉ざされた2つの世界がある意味では効率的に分離してきた。企業中心の生涯教育が確立されてきたために、その一方で、趣味を中心とする我が国特有の生涯教育イメージがつくられてきたのである。

しかし、こうした効率的な分離はさまざまな弊害をもたらしてきた。第一は、女性の職業開発機会が不十分になったということである。彼女たちの就業機会は不規則で、そのため継続的な企業内教育を受けられなかった。第二に、企業の学習機会が活発なのは大企業中心であり、中小企業ではその機会が少なかった。

労働市場の流動化、女性の社会進出という社会変化をあわせて考えてみれば、不平等是正のためだけでなく、効率的な人間資本の形成のためにも、職業教育が企業の外で提供される必要性が高まっていると考えられる。 また、企業に依存した生涯教育は、会社人間という効率的な生活様式を固定化させたが、それは退職後の人生を不安定的なものにもさせてきた、とも言える。 いずれにしても、職業的なもの、非職業的なものを問わず、「学校と企業」及び学習における「行政と民間」の新たなる関係が模索されなければならない時代にあることは確かである。