欧米の継続教育
@ 欧米との学生数の比較
我が国の大学生数は、欧米諸国と比較した場合どのようなものなのだろうか。次に掲げる表は、文部省発行の「教育指標の国際比較」より、主要国における人口1,000人あたりの大学在学者数である。
文部省「教育指標の国際比較」平成8年版pp.17-20より作成
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1992 |
1993 |
1994 |
1995 |
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日本 大学短大在学者 聴講生・研究生等を含む 通信制・放送大在学生を含む |
22.4人 22.8人 24.3人 |
23.1人 23.6人 25.2人 |
23.7人 24.2人 25.9人 |
23.9人 24.4人 26.1人 |
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アメリカ合衆国 フルタイム在学者 パートタイム在学者を含む |
31.4人 55.4人 |
32.2人 56.9人 |
32.0人 56.8人 |
31.5人 55.5人 |
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イギリス フルタイム在学者 パートタイム在学者を含む |
13.0人 20.5人 |
14.6人 22.5人 |
16.5人 24.9人 |
18.3人 27.1人 |
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フランス |
32.3人 |
34.1人 |
36.1人 |
36.5人 |
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ドイツ |
24.8人 |
22.1人 |
22.7人 |
23.0人 |
主要国における人口1,000人あたりの大学在学者数は、1995年の場合、フランスの36.5人が最も多く、次にアメリカの31.5人である。日本は、イギリスやドイツに比べると多いものの、パートタイム在学者を加えるとイギリスには抜かれてしまう。アメリカと比較するとパートタイム在学者を含めた場合の比較は、ほぼ倍近い差となっている。
このことから、日本の大学の在学生がいわゆる伝統的な学生に限定されていて、社会人の学習機関としては機能していないということが言えると思われる。
成熟した社会は、科学技術の高度化、情報化などにより知識、技術、情報体系の発展と再編成が絶えず生じる社会である。技術革新といった単に科学的な面のみでなく、国際化等により経済のしくみや社会制度が高度化したり、産業構造や就業構造の変化も激しくなってきている。このため、新たな知識や技術を習得するといった絶えず新しい学習ニーズが社会の中から生まれてくることとなる。大学が生涯にわたって人生の各段階の要請に応えた学習を提供し、しかも、社会の実際的な経験を踏まえた技術や課題意識を基礎に、高度な水準の教育機会を提供することにより、創造的でレベルの高い人材を輩出するための学習機関として存在することになるだろう。社会と大学とのこのような連携のなかで、大学の存在意義というものはますます増していくことと思われる。
ベビーブームの退潮と成熟社会の到来を少し早く経験したアメリカやヨーロッパの大学は、伝統的な学生の受け入れはもちろんであるが、それ以上に成人である社会人を数多く入れている。大学院やパートタイムも含めて計算すると、大体、学生の4割から5割が成人になっている。
学生というものには若者もいれば成人もいるというのがいわゆる先進国の常識なのだろう。基本的に、学生とは学びたいと思っている者のことを言うのであり、そこにおいては、年齢は関係ないのである。
A アメリカの継続教育
アメリカでは、1980年代を境に18歳から25歳の青年人口が減少しているにもかかわらず、実際の高等教育機関の在学者数は増加したという。先述のように、今や伝統的な学生が占める在学生数の割合は、全体の約半分程に過ぎない。そこには、働きながら単位あるいは資格を取得しようというパートタイム学生である成人の存在がある。今日、アメリカの大学経営を支えるパートタイム学生獲得の成功は、「継続教育」(Continuing Education) の発展にあったといえる。
そもそも、アメリカの高等教育機関は、ヨーロッパ型のエリート教育機関としてではなく、一般大衆に開放され、実務教育を提供する機関として発展してきた経緯があった。また、古くから大学の卒業生を対象に短期の公開講座を提供してきた伝統があった。いわゆるアルマナイカレッジと言われているものであるが、これらが継続教育の基盤となっている。
継続教育は、いわゆるエクステンション(拡張公開講座)とは異なり、大学が社会の教育ニーズに応えて新たな教育事業を行うものである。エクステンションが、通常大学で行われている講座を正規の学生外への枠を広げる大学の社会奉仕活動的色彩が強いのに対して、継続教育は大学内外の人材・資源を活用した大学の経営をかけた収益事業としての性格も有する。また、米国においては、企業、諸機関で働く人々に対して継続的な職業訓練を大学が提供するなど、大学と企業との結びつきが強い。
アメリカで継続教育に発展をもたらした理由、パートタイム学生の受け入れに成功した理由については、社会と大学の相互関係がうまく機能していること、大学組織としての支援体制が確立していることがあるのではないだろうか。
職業人、なかでも大企業で働く者への継続的な職業訓練を大学が提供していくためには、社会の変動とニーズを的確に捉えることができる柔軟な体制の確立が大学側に要求される。そのためには、ある程度専門の組織から独立された運営体制を確保することにより自由で多様性のある教育プログラムが可能となってくるのではないかと考える。