[NIKKEI NeT ITニュース「ネット時評〜 Digital Byline 」2001年6月18日掲載]
小さくない「正本」の電子化のメリット
電子的に作成された文書を「正本」として扱う環境が整いつつある。契約書、経理帳票、請求書など、これまで紙で証拠を残さねばならなかった文書の電子化のことである。これらを実現すれば、ビジネスプロセスの完全な電子化が可能となり、サービスの大幅なスピードアップ、人件費の節減、書類保管スペースの縮小、情報共有の拡大など、はかりしれないメリットが得られる。
■非効率を排除する電子的一元管理
例えば現在オンライン銀行などに口座を設ける場合にホームページで受け付けても、本人確認の書類と印鑑を郵送することが必要で、このために最低数日かかってしまう。正本電子化ができればオンラインで手続きを完結させることができ、即日利用可能となる。筆者に身近な学校の例で言えば卒業証明書や成績証明書などをわざわざ窓口に来ていただかなくても、本人の請求に基づいて、証明を必要とする組織に直接電子電子伝送するなどといったことも可能となる。同様に各種官庁への届け出や証明書の受け取りが電子化できれば大きな効果があることは容易に想像できる。
このような可能性を提供してくれたのが昨年成立した電子署名法だ。これで電子版の文書が法的な証拠となる契約書や帳票類の正本として扱うことが可能となった。これまでも契約書など公式文書の正式版は紙媒体が基本だった。電子版は存在しても非公式版としか扱われず、正式の手続きには紙版の正本を別途作らねばならない。しかし、このような中途半端な電子化では紙のドキュメント作成の部分がボトルネックになって、効率化やスピードアップも限定的なものになってしまう。それどころか、紙版と電子版を作るのが二度手間になってしまい、電子的な手段を使うことがかえって効率を下げる結果になってしまいかねない。文書管理の流れを一元的に電子化することによって、このような非効率を排除してシームレスな流れを作ることができる。
■ビジネスプロセスの見直しも
現実にメリットを享受するためには各組織、そして社会全体で基盤をきちんと整備しなければならない。例えば電子署名の定着が必要だ。ハードやソフトの整備だけでなく、誰がどの電子文書に署名する権限があるかなど、運用面での仕組みの整備をしなければならない。電子ドキュメントを証拠物として残すためには、それが改ざんされていない原本であることを証明する第三者証明の仕組みも必要だ。その手順を整えねばならない。ドキュメントを安全に保管する仕組みもないと動かない。電子書類保管体制の整備が必要だ。
電子化を真にサービスの向上やコスト削減に結び付けたければ、各企業におけるビジネスプロセスの見直しも必要だろう。単に紙の文書を電子文書に置き換えるだけでなく、ビジネスプロセス全体を見直して、電子化することによって従来にはできなかった仕事の組み方をする可能性も考えたい。
正本電子化のメリットを享受するためには地道な取り組みを行わねばならない。細かな詰めを行わなければならないことも多く、決して楽な作業ではないだろう。しかし、やることをやれば確実に大きな成果があげられる領域が非常に多い。正本電子化を今年後半の大きなテーマとして各組織で取り組まれてはいかがだろうか?