[NIKKEI NeT ITニュース「ネット時評〜 Digital Byline 」2001年5月16日掲載]
注目される「打ち込み君」の挑戦
京都エデュテイメントフォーラム2001コンテストで最優秀賞を受賞した「打ち込み君」(こちらを参照)を紹介したい。このソフトウエアは目の不自由な方がキーボード入力をマスターできるようにと、NPO(非営利団体)SCCJ(日本サスティナブル・コミュニティ・センター)と京都工芸繊維大学が行った共同研究の成果をSCCJが製品化したものである。これを使うと画面に頼らずに音声の説明にしたがって操作方法を習得し、ローマ字入力まで自然にできるようになる。視覚障害者だけではなく、高齢者などの情報リテラシーを向上するのに有用だ。技術として、取り組みとして非常に意欲的なものとなっており、注目に値する動きだと思う。
■市場原理と非営利を結びつけ
何よりソフトそのものが意欲的だ。ストーリー性を持たせて楽しませる工夫、的確に打つと褒めるようになっているなど、学習者の心理を考えながら凝ったつくりになっている。プロジェクト当初から意義は分かって応援していたが、それが技術と演出の裏打ちで仕上がったのが嬉しい。
取り組みの形態も面白い。新たに設立されたNPO「e音ネット」がお金を出して製品を買って下さる方に販売してコストを回収するかたわらで、視覚障害者、障害者、高齢者などの方々のIT支援をして下さる非営利団体に無償提供を行うという仕組みだ。寄付や補助金に頼って無償配布するのではなく、商品力でお金を稼いでそのあがりで社会的に意義のある活動をしようという心意気だ。製品が評価されればさらなる開発資金が入るし、評価されなければしぼむ。非営利といえども善意の押し付けではなく、本当に意義のある活動が生き残って栄えるしくみだ。市場原理と非営利を結びつけようという試みといってもいいだろう。
■弱きに大いなる力を発揮させる道具
高齢化が進む日本にとって、バリアフリー社会を構築することが決定的に重要であることは改めて強調するまでもないだろう。情報技術はかたわらでデジタルデバイドを拡大させる危険をはらみながら、高齢者や障害者の方々に積極的な社会貢献をしていただく環境を提供する。強きが弱きを助ける社会ではなく、弱きに大いなる力を発揮していただく道具を差し上げてみんなで社会を支える。どちらのシナリオになるかは、打ち込み君プロジェクトのような地道な活動が実を結ぶか否かにかかっている。
「音で拓くバリアフリーの扉:打ち込み君誕生記念パーティー」(こちらを参照)が京都で5月30日、東京で6月1日に行われる。支援をお考えいただける多くの方に参加していただきたいとのことである。