インターネット時代のビジネス・モデル 慶応義塾大学ビジネス・スクール助教授
今日の情報通信革命の大きな意義は、それが、さまざまな経営資源の従来にない新結合を可能にし、新しい価値を生み出すビジネス・モデルを構築する基盤を提供しているところにある。すでに、コンピュータ・ネットワーク時代ならではの新しいビジネス・モデルが生まれ、経済活動に革新の風を巻き起こしている。
現在、筆者の研究室でとりまとめ始めている、情報化に伴って広がりを見せているビジネス・モデルを整理しているリストが<http://www.kbs.keio.ac.jp/~kokuryo/impact/impact.html>にある。現在進化させているところで、今後変更があるかもしれないが、1998年9月9日時点には次のような項目が含まれている。
受注生産によって流通在庫を削減し、戦略的機動性を向上。 価格透明化(価格交渉の必要をなくす)による営業効率の飛躍的改善。 試作回数の削減による開発期間の短縮。 中間物流拠点集約化・共同配送による物流・在庫削減。 市場の広域化による成約機会の増加。 顧客間インタラクションによるサポート/顧客の商品開発参加。 顧客のデータベース直接アクセスによる応対要員削減とサービス向上。
1.1 受注生産によって流通在庫を削減し、戦略的機動性を向上。
コンピュータ業界でbuilt-to-order方式として注目を浴びている、受注してから組み立てを行い、向上からユーザに直送するモデルである。理論上は流通在庫が全くなくなる。在庫費用が削減できる以上に、企業に戦略的な柔軟性を与える。流通在庫があると、それがなくなるまで新商品の投入ができない場合があるが、流通在庫がなければ、最新の技術を使ったできたばかりの商品を生産体制が整い次第、即日市場に投入することができる。また、ヒットするかしないか、不確実性が高い商品も、投入して市場の反応を見ながら生産調整できる。
受注生産の思想は、生産ラインで行われているかんばん方式を市場にまで持ち込んだものである、と表現してもよかろう。供給連鎖の中で、川上が見込みで作ったものを川下に流すのではなく、川下から足りないものを川上に取りに行き、川上は川下の需要発生に反応して生産を行う。インターネット上の受注生産に違いがあるとすれば、古典的なかんばん方式が、隣あった工程間で受注生産をしていたのに対して、インターネット受注生産は最終消費者の発注行為が、供給連鎖の中で、最もリードタイムを必要とする部署に直接情報を送って、供給プロセスの引き金をひくところにある。 <要約版へ>
インターネットを使うと、いま何がいくらで売られているか、同じ商品であれば誰が一番安く売っているかがほとんど瞬時に分かってしまう。市場の透明性は消費者にもたらす便益は大きいものの、企業にとってはやっかいな代物で、うっかりすると泥沼の価格競争の中でマージンが全くなくなってしまう。ところが、ビジョンのある企業はこのような一見悪条件を逆手にとって競争優位を確立するモデルを生み出しつつある。
たとえば、初めから価格交渉をしないことで営業人員を削減し、低価格を提示するのだ。既にインターネット上のコンピュータ販売などでは公開価格で販売し、値引きをしないのが一般的である。顧客にとっても、営業担当者との価格交渉を行う時間の浪費から解放されるし、商品の下調べはインターネット上で提供されているさまざまな利用体験情報を見るほうが営業マンの売り口上を聞くより正確だ。
このような新しいモデルの導入が強いのは、既存のチャネルの強みを弱みに変えてしまうところにある。この例で言えば、強力な営業部隊を擁して、戸別訪問などを通じて販売を行っていた既存企業は、その資産が突如大きな債務になっていることを発見する。かと言って、急になくすわけにもいかず、すぐには対抗できない。既存の大企業が、抱えている人員や資産にとらわれて海外や他産業の新規参入者に市場と利潤を奪われている産業は多い。 <要約版へ>
製造業における、開発や生産の情報化は今後、日本が情報技術の分野において世界をリードできる有力な領域だ。不調と言われる日本経済の中でも製造業はいまだに強い競争力を有している。金型制作などに蓄積された日本の技術には他の追随をゆるさないものも多い。
今日の製造業にとって、開発期間の短縮が競争優位の有力な源泉となることについてはほぼ異論がないだろう。製造業において、開発期間を劇的に短縮させる可能性を持っているのが、三次元CAD(computer aided design)システムである。開発期間を短くすることによって、その時々の顧客ニーズにより適した商品を、より直近の販売予測データをもとに市場に投入することができる。
三次元CADの経営学的分析については国際大学の竹田陽子氏が本格的な研究を行っており、氏の研究成果を待ちたいところだが、とりあえず想定できる大きなメリットがコンピュータ上のデジタル試作によって物理的な模型や試作によるプロトタイピングの回数を減らすことだ。製造業においては、物理的なプロトタイプの作成が開発期間を長くする大きな原因となっている。その時間を費消するプロセスを何度も経ながら開発が進んでいく。プロトタイピングの重要な役割はさまざまなフィードバックを得ることであり、これを安易に省くと後から予期しないトラブルに見舞われる。この重要かつ重たいプロセスを極力デジタル空間上で行うのだ。デジタル処理してシミュレーションできれば、プロトタイピングに必要な時間は大幅に短縮され、開発期間を短くすることができる。 <要約版へ>
情報技術による物流合理化を分析していると、かなりの頻度で出てくるのが、なんらかの形で物流や在庫拠点を集約化する手法である。 消費財流通など見られる一括配送モデルは、物流の共同化による合理化の代表である。N社のメーカーとN店の小売店舗を直接トラック配送するとNxNのトラックが行き交うことになる。これが一括配送センターを間に挟むことによってN+Nのトラック便で済むことになる。
在庫集約は物理的に行う以外にネットワーク上で「論理的」に行うこともできる。中古自動車オークションのオークネットは、全国の中古自動車ディーラーが他のディーラーに転売する意思のある車を画像データベースで検索可能にすることによって、メンバー全てが共有する巨大な集約在庫があるような状態を作っている。物流は実際に商談が成立した時にはじめて行う仕組みだ。このようなデータベース上の在庫を持つことによって、中古車ディーラーは物理的な在庫を持つ資金繰りと駐車場スペースのコストを減らすことができる。 <要約版へ>
市場の広域化は情報技術を活用したビジネス・モデルの代表的なものである。何らかの手段で従来対面販売が必要だった商品を、対面販売しないでも取引できるようにすれば、商圏は一気に拡大する。洋書を購入する方ならば、アメリカのアマゾン・コムのサイトから直接購入された経験を持っている方も多かろう。
市場の広域性はシアーズ・ローバックがアメリカの農村部を市場として発展してきた時以来、通信販売というビジネス・モデルの基本的な特徴だった。通信販売は整理番号5、つまり在庫拠点の集約化の効果もあわせ持つ場合が多い。書籍のような品目数が極端に多く、一点あたりの需要頻度が低く、宅配便や小包の送料が気にならない商品については、店舗に分散して在庫を持つよりも集中して在庫を持つことが望ましい場合が多く、通信販売に向いている。
生産財のカタログ通信販売で高い利益を上げているミスミは従来、地域化していた金型部品などをカタログに載せることによって、生産と市場の両方を全国化してきた。これによって従来、小さな市場しか相手にできなかった生産者は全国のユーザに販売するチャンスを手にした。逆にユーザ側は全国でもっとも好条件で納品してくれるベンダから調達できるようになった。
従来の紙媒体のカタログ通信販売を超えてインターネットが可能性を提供するのは、やはりカバーできる市場の広さだろう。地域的な広さはもちろんのこと、購買頻度が低い顧客に対して最新の情報を届けるコストも極めて安い。
市場広域化の一つの形態がグローバル化であると表現すれば、本件の重要性がより認識しやすいかもしれない。金融業などにおいて、ネットワークがグローバル化と密接に関連していることは、日常的に感じられることであろう。ATMのようなものにしても、今や、全国ネットワークは当たり前で、世界のどこに行っても自分のカードで預金がおろせるようでなければ競争力が持てなくなっている。グローバルなシステム展開という意味では日本の金融機関は世界的にプレゼンスを持っているとは言い難く、米国のネットワークに相乗りさせてもらう形態でしか、展開ができそうにない。インターネット・バンキングが始まると事態はもっと深刻になると思われ、日本の銀行が日本の消費者にアクセルするコストも、アメリカに銀行が日本の消費者にアクセスするコストも、ネット上なら同一である。そうなると、彼我のコスト構造と手数料など料金の格差が一気に表面化する。既に日本の個人資産をめぐってグローバルな争奪戦が始まっており、インターネットがその重要な道具になることも想定される。
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1.6 顧客間インタラクションによるサポート/顧客の商品開発参加
多くのビジネス・モデルでネットワークを活用することで顧客が商品価値をつけてくれる、という現象が現れている。これの典型例が顧客間の商品サポートで、コンピュータなどの商品について使い方が分からない時には、メーカーに問い合わせるより、パソコン通信の会議室上で他のユーザに聞いた方が早く、より親切に答えてくれる場合が多い。ユーザサポートは企業にとってコストの発生源であり、顧客にとっては顧客満足の重要な要件であることを考えると、これは顧客が相互の交流を通じて、価値の創造をしているといえる。
伝統的な需要過多である状況においてはコミュニケーションは提供者からの一方的なものでよかった。大量生産・販売時代のマスマーケティングの手法がこれにあたる。ラジオ・テレビなど、放送系の電子メディアはこのような一対多の一方向コミュニケーションに大きな力を発揮し、近代的なマーケティングを確立させたと評価して良いだろう。 需要過多から転じて、供給過多になってきた時に必要となるのが、提供者と顧客の双方向コミュニケーションである。顧客との双方向コミュニケーションは現代のマーケティングの大きな主題と言ってよいだろう。顧客の意向を汲み取ることを重視するCS(顧客満足:customer satisfaction)指向、個別の顧客に合わせた商品供給の個別化をはかるマス・カスタマイゼーションや、ワン・トゥ・ワン・マーケティング、顧客との関係を重視する関係性マーケティングなどは、すべて顧客とのインタラクティブな情報のやり取りを前提としている。近年とみに見られる傾向はインターネット、特にWWWを利用した顧客データベースの構築である。WWWを活用することによって「個客」の情報を入手しきめ細かなニーズに応える。
ネットワークの発展は単なる顧客と企業のインタラクションを超えて先へ行く。すなわち「顧客同士」のコミュニケーションを活性化させ、顧客間インタラクションを盛んにするのだ。サイバースペースにおけるマーケティングは、従来の大量生産された商品を一方的に顧客に供給するものと違い、顧客が積極的にモノ作りに関わらせるものとなる。その過程において単に企業と顧客のコミュニケーションだけでなく、質の高い顧客間インタラクションがあることが重要な成功要因となることが、電子商取引を実務や研究のレベルで扱っている人間の観察として浮上しつつある。これと上手にお付き合いする能力を持つことがエレクトロニック・コマースの時代の企業にとって重大な意味を持つことになるであろう。 <要約版へ>
1.7 顧客のデータベース直接アクセスによる応対スタッフの削減
米国の会社で航空便による宅配サービスフェデラル・エクスプレスは、ユーザに対して自分の送った荷物がどこにあるのかを確認できるサービスを提供していることで有名である。もっと原始的だが、数多くの企業でホームページ上にFAQ(frequently asked questions)に対する回答集などをのせている。
これらは顧客に対しては質問に24時間答えてくれる便利なサービスを提供する一方で、答える企業には電話による問い合わせなどに応対する時間を節約する効果をもたらす。もちろん、これで対応可能なのは比較的定型化された質問に対してのみであるが、電話応対の大半を占める簡単な問い合わせへの対応を機械にまかせることにより、人間の直接対応が望ましい難しい案件や、機械の操作を好まない顧客との対応により多くの時間を使うことができる。上手に設計すると顧客満足とコストダウンを同時に達成できる。 <要約版へ>
事例研究の蓄積から、共通のテーマを探すと、インターネット時代のビジネス・モデルは多様な主体の多様な知が、ネットワーク上で結合していくモデルである、と表現できると思う。 そこには個別のモデルをまたがって、共通した流れがいくつか見える。
工業社会においては、価値は企業が生産し、消費者が受容し、対価を支払うものだった。大きな生産設備が必要である物財の世界ではこれは必然であったかもしれない。ところが情報が価値の源泉となる社会においては、消費者は情報という価値を発信し、価値を増大させる生産の担い手となる。
プロシューマー化というのは、かつてトフラーが予言した現象であり、概念的には新しいものではないが、今それが現実のものとして大きな価値を生み出しつつあり、それをビジネス・モデルの中に組み込むことに成功した企業は、顧客の力を借りながら低コストで高い顧客満足を達成することができる。
森田(1998)によるパナソニックのサブノートコンピュータの開発の研究は単なるユーザサポートを超えて、ユーザ相互のコミュニケーションの観察をシステム的に商品改善のプロセスの中に取り込んだものだ。顧客が発見した商品欠陥の情報や、新しい機能付加への要望などをすばやく生産や開発部門にフィードバックし、早期の対処を行う仕組みが出来上がっている。ネットワークを通じて顧客が商品価値形成に参加してきている。
シチズンによる顧客デザインの時計の生産も参考になる。同社のインターネット上のサイトにアクセスして申し込むと、時計のデザインソフトウエアと基本デザインパターンが送られてくる。それを使って自分好みの時計をパソコンで設計し、出来上がった作品を送り返すと時計にして販売してくれるサービスだ。顧客までをサプライチェーンの中に取り込んだビジネス・モデルといえる。 <要約版へ>
生産者と顧客の関係の変化がビジネス・モデルに具体的に反映されているのが、販売代理モデルから購買代理モデルへの転換だ。多くの消費財を供給している業界において、店頭への配送をメーカー専属の販社から行う仕組みから、共同配送センターを運営する仲介者から一括して行うモデルへの切り替えが進んでいるのはその現われである。
従来型の卸や販社が、一つか数が限られたメーカーの販売を代理する販売代理店であった。これに対して、今日勢いを増しつつある一括配送卸は、自分の担当するカテゴリに関して、小売の望む全てのメーカーの商品をそろえて、小売店に適量をバラで供給する。つまりメーカーの代理というよりも小売の購買機能の代理を行っている。購買代理の考え方は生産財の通信販売をしているミスミが経営の基本コンセプトとして掲げていることで有名である。
購買代理モデルが強いのは顧客に密着することによって、顧客情報を取り込むことができるからである。販売代理モデルが基本的に特定のメーカーに密着して、その顧客を探してまわるというモデルであるのに対して、購買代理モデルにおいては顧客や(顧客が顧客間インタラクションを通じて形成する)コミュニティに密着して、そのニーズを満たすメーカーを探す。
特定のメーカーが全ての消費者のニーズをほぼ満たせる時代には、販売代理モデルと購買代理モデルの違いをそれほど意識せずに、特定メーカーがフルライン政策によって、全てのニーズを満たす戦略を遂行する手伝いをし、そのメーカーにロイヤリティの高い顧客にサービスを提供していればよかった。ところが経済が成熟化するにつれて、消費者が特定のメーカーのブランドを盲目的に受け入れるのではなく、それぞれの商品についてもっとも評価の高い商品を求めるようになってくる。このような状況下において、購買代理モデルはメーカーと少し距離をおいてでも、顧客との密着をはかろうとするものだ、ということができる。そのどちらが有利かは、メーカーが持つ情報の方が希少か、消費者情報の方が希少か、という点にかかっている。 <要約版へ>
2.3 顧客の情報量の多さを織り込んだビジネス・モデルになる。
販売代理モデルから購買代理モデルへの転換を「顧客の情報量の多さを織り込む」モデルであると認識することもできる。情報化時代のビジネス・モデルの多くに共通した特徴だ。前節で述べた通り、一括配送化の動きも、表面的には技術の発展に伴う、供給方法の変化に見えるが底流にあるのは、商品知識を豊富に持ち、買いたい商品について世間がどのような評価をくだしているかについての情報を豊富にもった消費者の存在である。
マージンが透明化し超過利潤を発生させにくくなる中で、物品販売にかわって浮上するのが、アフターサービスに利益源を求めるモデルである。PHSなどで、回線契約を結んでくれれば、電話機は極端に安くていいという販売が見られた例を想起していただきたい。自動車などにも販売は無店舗でネットワーク上で行い、地域拠点は保守サービス収入で維持する方式が成立する時代が来ているように見える。
サービス化モデルが強いのは、付き合いの中で顧客情報が得られ、個別化したサービスメニューで利潤を獲得できるからだ。情報化時代に希少なのは商品を提供する側の情報ではなく、顧客側の情報なのだ。 <要約版へ>
2.4 デジタル財の物財とは異なるコスト構造を反映した・モデルが増える。
顧客間インタラクションなど、電子市場における新しいビジネスの展開を分析していると、コンピュータ・ネットワークによって作りだされる人工空間−サイバースペース−が、経済空間として従来の工業を主体としたものとはかなり異なることがわかる。
たとえばインターネット上でデジタル財(ソフトウエアなど商品がデジタル信号である無形財)を供給しようとした場合のコスト構造には、財の供給者には変動費がほとんどかからないという極めて大きな特徴がある。ほとんどが開発費であり、それを定額で借りられるサーバの上におくと、変動費(ネットワークコスト)はすべて購買者が負担し、財の提供者にはかからない。このようなコスト上の特異な性質により、インターネット上ではデジタル財の無料提供が大規模に見られる。変動費が発生しない時、固定費の回収方法が別途(広告などが代表的)あれば、いちいち料金回収コストを払ってお金を取るより、財を無料で提供してしまった方がよい場合も多い。
関連して、注意をひくモデルとして、ソフトウエア業界にソースコード(機械語に翻訳する前の人間が解読できる言語で書かれたプログラム)を公開してしまうオープンソース・モデルがある。この手法には(1)ソフトウエアの内部構造が見えるのでプロの利用者が安心して使える、(2)第三者による補完的な製品の開発を促す、(3)ユーザからの情報提供による製品改良を行いやすい、などのメリットがある。積極的に顧客に情報を開示することで、逆に顧客からの情報提供を促し、製品価値を高めていくという思想だ。この場合、公開してしまうソフトウエア自体では売り上げをあげることが難しいが、それを組み込んだシステム構築サービスなどが栄えることとなり、そこから収益をえる。大手システム業者などが公開ソフトウエアをサービスに組み込む動きを見せており、このモデルが広がるとソフトウエア業界の収益構造が一変する可能性がある。 <要約版へ>
2.5 アウトソーシングなどを活用したバーチャルな組織構造が増える。
いろいろなモデルに共通して見られるのが、外部資源の有効活用だ。これはアウトソース、バーチャル化、などのキーワードで表現される。例えば受注生産体制を組んでいるデルなども、部品供給、物流などにおいて、戦略提携を結んだパートナーとの連携が決定的に重要な要素になっている。情報産業において小さなベンチャー企業が活躍する背景にも、人、モノ、カネ、全ての面にわたるアウトソーシングのサービスが発達しているので、自社は得意領域に特化することができる事情がある。
ネットワークは組織間コミュニケーションを円滑にし、さまざまな提携関係をやりやすくする。
中核分野に特化しつつ他社と連携していく、ということは自社もアウトソース・サービスを提供していく存在になっていくことを意味している。
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2.6 まとめ:結合によって生まれる価値
販売代理から購買代理という流れも、顧客の情報量の多さを織り込むビジネス・モデルも、かつては分断されて、情報発信するすべがなかった消費者が、POSシステムや、イ
ンターネットによる口コミなどによって、その声を世の中に発信しはじめた現われと言える。情報技術は個別的には小さな個人の声を集積し、集約し、大きな渦にしていく。それが
商品の企画や生産や流通に影響を与え始めた。
アウトソーシングなどのバーチャル化は、当面の固定費を下げたり、事業部門を切り離してリストラを行う手段としてアウトソーシングを行う手段として始まる場合が多い。そのよう
な現実を踏まえた上でなお、アウトソーシングの本質は最良の経営資源やノウハウの結合である、と主張したい。ビジネスを遂行する上で必要な全ての機能を全て自前で抱え込
むのではなく、いくつかの機能に分解し、それぞれの機能についてもっとも優秀な企業が担当するのだ。
ベスト・プラクティスやベスト・プロダクトがネットワーク上で結合して、新し
い価値を生み出す。
かくして情報ネットワークは社会のすみずみで分断されていた情報を出会わせ、相互作用を促してその価値を高めていく。
結合の空間を形成する上で重要なのが、情報通信料金体系の改革だ。情報通信革命の本質は生活者まで含めた多様な主体が参加する情報の結合にある。商品知識を川上から川下に一方的に流すのではなく、顧客が発信する情報が価値を生む。従って、ネットワークの利用料金は彼らの情報発信を促すものが望ましい。ところが、日本においては、CATVなどがある一部地域や深夜時間帯を除き、個人に現実的に手が届く料金水準のサービスとしては従量制料金のものしかない。
比して米国においては市内通信料金が定額制である。結果として月額定額の料金を払うと、インターネットが無制限に利用できる。それが膨大な情報の発信と結合による、新しいビジネス・モデルの勃興をうながしている。日本の現実は逆だ。個人が情報発信することに対して対価を払うべきだとさえ言えるのに、かえってペナルティが課される。これでは新しいビジネス・モデルが育たない。
ベスト・エフォート型と呼ばれる、回線の空き容量を活用する通信(インターネットがその代表)については、定額制を導入することに経済合理性があり、日本でもいずれはその方向で進むのだろう。問題はそのタイミングだ。米国において、既にネットワーク時代に適合したビジネス・モデルが次々に開発され、競争力の高い企業が生まれているのに、そのテンポに日本の社会が追いついていない。時間はもうない。
新政権のもと、次の緊急目標を掲げたらいかがだろうか?「2000年までに、競争原理のもとで、全国で月額1万円未満でベスト・エフォート型128キロビット/秒(電話二回線分の速度)以上の定額サービスを利用できるようにする。」日本の全住民がマルチメディアでのびのび受発信し、自由な発想で新ビジネスを興す基盤を作るのだ。