『他者の信頼性判断の正確さと一般的信頼−実験研究』
菊地雅子・渡邊席子・山岸俊男(1997)
The Japanese Journal of Exprimental Social Psychology.1997,Vol.37, No. 1,pp23-36
(1)他者に対する一般的信頼のレベルに関する従来の研究
(2)他者の信頼性判断の手がかりに関する従来の研究
(3)本研究の仮説
(4)実験方法
第1実験において被験者は与えられたテーマについて30分間の議論を行った。ついで第2実験では、被験者は、他の被験者のうちの2人と1回限りの囚人のジレンマ(取引)を行い、その中で取引での協力・裏切りの選択、ランダムに決定された2人の相手のそれぞれとの取引を拒否するかどうかの決定、取引の相手の行動の予測の3項目を行った。
(5)結果
他者の一般的な(すなわち特定の相手に対してではなく誰に対しても適用される)信頼性の予測において、他者一般を信頼する傾向の強い高信頼者は、低信頼者より正確な判断をすることがわかった。
(6)結果に対する考察
一般に機械コストの大きな社会では、既存の関係を離脱し新たな関係を探し求めることにより、関係にとどまり続けた場合には得られない大きな利益が期待されるが、新しい相互作用相手の信頼性を見極めるために、相手の評判に注意を払ったり、相互作用現場で相手をよく観察することによって相手の信頼性の欠如を示唆する情報に注意を払うなど、注意深く振る舞うと考えられる。これを山岸らは「認知資源に対する投資行動」と呼ぶ。一般に機会コストの大きな社会では、この意味での認知資源に対する投資行動が起こりやすく(その理由は、そのような投資から得られる利益が大きいからである)、その結果、社会の中でうまく身を処する能力である社会的技能の一種として、他者の信頼性についての判断能力が発達すると考えられる。
機会コストの大きな社会で他者の信頼性についてのデフォルト推定値としての一般的信頼が高くなるのは、このような認知資源に対する投資の副産物と考えられ、このような判断力を発達させた人々は、そのような能力を持たない人々に比べ、情報のない相手の信頼性に対するデフォルト推定値を高く保っておいても重大な結果を招くことが少ないからであると考えられる。
以 上
(文責:澁谷覚、1998年10月4日)