Designing Complex Organizations
Galbraith,J.R.
Addison-Wesley 1973
『横断組織の設計』 J.ガルブレイス著
梅津祐良訳 ダイヤモンド社(1980年)
○従来の組織研究のレビュー
○本書の問題提起
(1)職務の不確実性が組織に重要な影響を与えるのはなぜか
(2)職務の不確実性をどのように組織設計決定に関連づけてゆくべきか
○本書で用いられている基本的な概念の定義および仮説
職務の不確実性:職務を完遂するために必要とされる情報量と、すでに組織によっ
て獲得されている情報量とのギャップ
(2)職務を完遂するために必要な情報量:
a.各製品、サービス、顧客の種類の数によって決定される組織のアウトプットの多様性
b.プロジェクト遂行に必要とされる専門技術、製造部門に必要とされる機械ラインの数
などによって決定される組織のインプット資源、人材の種類と数
c.機械利用率などの効率指数によって決定される目標や、業績達成の困難度
(3)仮説:
職務の不確実性が大きければ大きいほど、意思決定者とその決定を実行していく部門との間で交換されるべき情報の量が増えてくる
○本書の理論的フレームワークと主張
情報の量が増大すると、組織は以下のような通常の組織管理システムを設定、強化して
対応する。
a.ルールとプログラム
b.階層構造的意思決定
c.目標設定
情報処理負荷にこれらの組織管理システムで対応し切れなくなると、(2)の情報処理量低減方策、または(3)の情報処理能力拡大方策をとらざるを得なくなる。
(2)情報処理量の低減方策、
a.調整付加資源(スラック・リソース)の投入
b.自己完結的職務の形成
(3)情報処理能力の拡大方策
a.縦系列の情報処理システムの改善
b.横断的関係の形成
○本書の主張は、組織が必要とする情報処理能力が、必然的にその組織の形態を規定するというものである。H・A・サイモンは「組織とは情報を創造し、変換するするシステムである」と述べて、組織を情報処理の面から定義した。それ以来不完全な組織が不完全な情報をどのように処理するのかという観点から、組織の情報処理に関する研究が進められてきたが、その中心が本書を著したガルブレイスである。
○本書において最も多くのページ数が割かれているのは、フレームワークの(3)にも述べられている通り、組織の情報処理能力をいかにして拡大するかという問題であり、b.の横断的関係に関しては、具体的に、管理者間の直接接触、連絡調整役の設置、タスク・フォースの形成、チームの活用、統合的役割の設置、統合管理者への移行、マトリクス組織の確立などの方策が提案されている。
また横断組織に必然的に伴う部門間の権力関係の問題や、マトリクス組織における権力構造のあり方についても考察を加えている。
このように組織における情報処理システムのあり方という点からは、本書のフレームワークの(3)の部分がもっとも関連が深いと言えるが、一方で(2)において提案されているように、組織の情報処理負荷増大の問題に対応するために、必要とされる情報処理量を低減するという視点はユニークであり、本書の1つの特徴と言える。組織に限らず、我々が情報処理システムのデザインを検討する際に、いかに効率よく必要な情報処理を行うかということはもちろん、処理を必要とする情報の発生量をいかに抑えるかという視点を常に持っていなければならないという、当然のようでいてもしかしたら忘れられがちであるかもしれない視点を、本書は改めて我々に問い直している。
以 上
(文責:澁谷覚、1998年10月4日)