The Visible Hand: The Managerial Revolution in American Business

Alfred D. Chandler, Jr.,Harvard University Press,1977

『経営者の時代-アメリカ産業における近代企業の成立』/チャンドラー著 鳥羽欽一郎・小林袈裟治訳 東洋経済新報社

 

<本書の主題>

 

○近代企業の特質:

・多数の異なった事業単位から構成されている

・階層的に組織された俸給経営者によって管理されている

 

○なぜ「ビジブル・ハンド」が市場メカニズムによる「見えざる手」にとって代わったか?

←市場メカニズムより、近代企業内部のマネジメントの調整の方が有利な条件が作り出さ  

 れたから

・新しい技術と拡大した市場

・標準化された製品をその統制の下におく原料を用いて生産

・自ら創設した販売組織を通じて流通

・速度の経済を実現しうる条件

 

○本書で取り扱う上記主題を明らかにする上での命題

  1. 複数の事業単位をもつ近代企業が小規模の伝統的企業にとってかわったのは、近代企業による管理的調整が、市場メカニズムによる調整と比較して、生産性、コスト、利潤において優越するようになってから。
  2. 単一企業の内部に多数の事業単位の活動を内部化することの利益は、管理のための階層制組織が創設されることによって、初めて実現される。
  3. 近代企業が歴史の上で初めて出現したのは、経済活動の量が増大し、管理的調整による方が市場による調整よりも効率が良く、またいっそう有利な段階に達してからである。
  4. ひとたび階層的な管理組織が形成され、管理的調整機能を成功裏に遂行するようになると、階層制管理組織それ自体が、企業の永続性、活力、そして持続的成長のための原動力となる。
  5. 階層性組織を指揮する俸給経営者の経歴が、次第に技術的かつ専門的になった。
  6. 複数単位制企業がその規模において大きくなり、業務内容の多様化を進め、また一方、その管理者がますます専門家となるにつれて、企業の経営がその所有から分離するようになった。
  7. 職業経営者は経営上の意志決定に際して、どちらかというと、現在の利潤を極大化する政策よりも、企業の長期的な安定と成長に有利な政策を選好する。
  8. 大規模企業が成長し経済の主要部門を支配するようになるにつれて、経済の各部門、そしてついには経済全体の基本的構造が大きく変化した。

 

 

 

 

 

<本書の内容>

○第1部:生産と流通の伝統的過程

 

○第2部:交通と通信における革命

 

○第3部:流通と生産における革命

 

○第4部:大量生産と大量流通の統合

 

○第5部:近代産業企業の管理と成長

 

○結論

 

○本書の意義

 本書の問題提起は、19世紀の経済学において前提とされた「見えざる手」が、本書のタイトルにもなっている「ビジブル・ハンド」すなわち見える手としての、近代巨大企業の内部での一貫体制に取って代わられていったのはなぜか、というものである。これに対して本書は、1840年代から1920年代のアメリカ産業発展の歴史に関する膨大な資料をサーベイし、実証研究を行ったものである。

 本書に記されたアメリカ産業の黎明、勃興、発展に関する膨大な歴史資料を読破したときに気づくことは、本書の中に登場する幾多の巨大企業は、その多くが現在でもそれぞれの業界においてリーダーとして君臨しているということである。これは、現代の産業構造の多くの部分が1920年代までにすでに出来上がっていたことを意味する。

 20世紀も残り僅かとなった今日、時代は情報処理技術の急速な発展、アメリカのヘゲモニーと冷戦構造を機軸とした資本市場体制の危機など、大きな節目を迎えている。「次の時代がどうなるのか?」という問題を誰もが真剣に考えなければいけなくなっているいま、「今までの時代がどのような経緯でできあがったのか」を明らかにした本書の意義を改めて見直す必要があることは間違いない。

以 上

(文責:澁谷覚、1998年10月4日)