Schumpeter, Joseph A.
"Theorie der Wirtschaftlichen Entwicklung," 2. Aufl., 1926.
(邦訳:塩野谷祐一・中山伊知郎・東畑精一『経済発展の理論(上・下)』岩波書店, 1977.)

本書の主題は「発展」である。シュンペーターの大いなる貢献は経済自らの中に内発的な発展要因があると喝破した点にあり、しかもその発展は不連続で飛躍的な革新を経て生まれるとした点にある。

本書では、まず最初に経済の「循環」を説明している。そこでは、年年歳歳、経済は同じ軌道を繰り返し、余剰価値=利潤は生まれない。そこで、次なる「発展」の理論が必要となる。著者によれば、経済活動はすべて諸生産用役の結合にあり、発展においては「新しい結合」すなわちイノベーションが必要とされるのである。そして、このイノベーションを経済にもたらすのが「企業者」すなわちアントレプレナーである。本書の真の主題はまさにこの発展をもたらす原動力としての「企業者」を説明することにあるといっても過言ではないだろう。

以下、本書では企業者が「企業者活動」をおこなうためには「信用と資本」が必要であることを説き、企業者活動のみから「企業者利潤=真の利潤」と「生産的利子」が発生すると説明を進めていくのである。そして、最後には景気の循環の説明を、企業者が群れを成して現れるという現象に求めている。つまり、イノベーションが一群の塊となって現れる様を描いているのである。

本書の現代的価値について考えてみよう。いままた、イノベーションやアントレプレナーの重要性が論壇に登っているが、本書に見るようにすでにシュンペーターがそれを問題提起していたのである。いま、デジタル革命の時代と巷間では騒がれている。マイクロソフトやインテルなどのベンチャー企業がハードウェアとソフトウェアの革新をおこない、デジタルベースのアーキテクチャを普及させ、それを軸にして数多くの情報通信産業が群がるように成長の環に加わっている。過去を振り返れば、自動車というイノベーションが単に自動車産業を生み出しただけではなく、ガソリンスタンドや整備業、損害保険、レンタカー、さらには郊外型大規模商業施設やレジャー産業などの関連する産業を無数に生み出していったことを我々は体験している。いままた不連続な発展の境目に位置しているであろう現代こそ、本書を再訪する意味があるのではないだろうか。

以上

(文責:森田 正隆, 1998年6月2日)