McFarlan, F. Warren(1984)

"Information Technology Changes The Way You Compete" , Harvard Business Review, May-June 1984, pp98-103.

(邦訳:『情報技術が競争のあり方を変える』DHB Aug. - Sept. 1984)

 

≪要旨≫

本論文では、情報システム技術の利用分野が従来の後方支援という限定的な役割から、競争上の優位性を確保する上で重要な意味をもつ分野へと急速に拡がってきていることに着目し、このような情報システム技術が企業に及ぼす影響とその戦略性に対する可能性を以下5つの観点から指摘している。

(1)情報システム技術は参入障壁を構築しうる。

(2)情報システム技術は顧客の切換コスト高め、自社に対する顧客の依存度を増大させうる。

(3)情報システム技術は競争の基盤(コスト優位・差別化・特化)を変えうる。

(4)情報システム技術は企業間の買手と売手の間の力関係を変化させうる。

(5)情報システム技術は既存商品の価値を向上させたり、新しい商品を生み出しうる。

また、本論文では、過去数年間における情報システム技術の変化は急速かつ突発的なものなので、各企業における情報システムの役割を再検討し、その位置付けがなお適切なものかどうかを確認しておくことが必要であると主張し、経営管理者に求められる新たな視点として、以下5点を指摘している。

(1)資源配分のプライオリティを考える

経営管理者は、情報システムに対する投資を検討する際に、当該支出が「システム修復・維持」「新技術に対する研究開発」「競争優位性の獲得」「対等の競争力の維持・回復」「定められたROI」のどの目標を目指したものなのかを識別し、優先順位を考えて資源を配分しなければならない。

(2)経営管理者は、戦略的な情報システム計画やその考え方についての機密性を確保するために適切な手段を講じなければならない。

(3)経営管理者は、情報システム投資に対する自社の望ましい水準を考えるにあたって、単純な売上高との比較や安易な他社比較などを行わないようにしなければならない。

(4)企業間情報システムの構築は、隠された二次的な影響(仕入先の固定化・価格決定における無力化・システムの非効率性・過大な支出など)を持ち、企業間の力関係を変える可能性を持っていることを銘記しておかなければならない。

(5)経営管理者は、情報システムへの資源配分において、過度に効率を志向してはならず、慎重な分析にもとづいて意思決定しなければならない。

 

≪コメント≫

昨今の情報技術の進歩は目覚ましく、本論文の執筆された集中処理システム全盛の時代から、現在では分散処理情報通信システムの時代へと移り変わりつつある。それにともない、情報技術が財やサービスのコスト構造・選択可能な戦略の範囲に及ぼす影響も大きく様変りしている。その結果、現在では、本論文が主張するような規模・範囲の経済性を背景とした情報技術による顧客囲い込み戦略から、むしろより標準的なインターフェイスを用いて他社との互換性を増しネットワークの経済性を追及する、いわゆるオープン型戦略が求められるようになってきている。その意味では、本論文で主張されている論旨のいくつかは書き換えなければならないであろう。しかし本論文の貢献は、競争戦略に対して情報技術の及ぼす影響を初めて体系的に指摘したという点にあり、この意味からは、その貢献内容は計り知れないものがあると言えよう。

 

以 上

(文責:坂爪 裕、1998年6月17日)