本書は、普及学の権威である著者が研究の集大成としてまとめあげた重厚な知的生産物であり、イノベーションがどのような普及過程を通して伝播していくのかを理論的、経験的に解明している。
新技術、新製品、新ライフスタイルなどのイノベーションは社会に新たな選択肢や手段を提供することで「不確定性」を増大させる。そして、その新たな不確定性に対処するために、人々は「情報探索」をおこなうように動機づけされるのである。著者の定義に従えば、「イノベーションの普及は、本質的に、新しいアイデアについての主観的に知覚された情報がコミュニケートされる社会過程」なのである。
よって、イノベーションの普及という観点から社会における情報伝播についての理論を概観した本書は経営情報学を学ぶものにとって必読の書と言わざるを得ない。
<本書のポイント>
イノベーションの決定過程(再発明という概念も)
- 知識段階(イノベーションの存在を知る)
- 態度段階(好意的、もしくは非好意的な態度を形成する)
- 決定段階(採用するか否かを決定する)
- 実行段階(使用する)
- 確信段階(決定についての補強を求める)
コミュニケーションチャネルの果たす役割
- イノベーション決定過程において、マスメディア・チャネルとコスモポライト・チャネルは知識段階で、個人間チャネルとローカライト・チャネルは態度段階で相対的に重要である。
イノベーション属性と普及速度
- 相対的有利性(より良いものであると知覚される度合)
- 両立性(価値態度、過去経験、欲求と一致している度合)
- 複雑性(理解と使用が難しいと近くされる度合)
- 試行可能性(小規模レベルで実験できる度合)
- 観察可能性(成果が人々の目に見える度合)
革新性による採用者カテゴリー
- 革新的採用者(冒険的な人々)
- 初期少数採用者(尊敬される人々)
- 前期多数採用者(慎重な人々)
- 後期多数採用者(疑い深い人々)
- 採用遅滞者(伝統的な人々)
- 正規分布に従う
オピニオン・リーダーの役割
二段階流れモデル(アイデアはオピニオン・リーダーを経由して人々へ流れる)
普及ネットワーク(構造、連結、弱い結びつき、社会的学習)
チェンジエージェントの役割
普及機関を代表し、イノベーション決定に影響を与える
以上
(文責:森田 正隆、1998年5月26日)