小川孔輔
『マーケティング情報革命』有斐閣, 1999.

本書の主題は、デジタル情報とネットワーク技術によってマーケティングの方法が変化しつつあるという認識のもと、マーケティングのどこが変化したのかという問いに事実をもって答えるところにある。著者は試行的に理論枠組みを提示するとともに、複数の事例記述によってその妥当性を検証している。理論的な枠組みについてはそれほど目新しいものや、あるいは常識をひっくり返すようなものはない。たとえば、本書では情報化の影響として、市場がグローバル化していくこと、組織間取引関係においてプラットフォームの重要性が増すこと、情報を活用した意思決定が求められること、物財と情報財が融合していくことなどがあげられている。

しかし、本書の特徴は理論的貢献というよりも、多数の事例が織り成すことによってもたらされる説得性や、モザイク的な技法によってデジタル経済がビジュアル化されて浮かび上がってくるところにあるのだろう。読者はそれぞれ自分自身の物差しをもって事例を読み解いていくこともできる。そして、それこそがまさしく著者の隠された重要なねらいであろう。どんなに革新的な事例であろうがそれ自体はすぐに古びていってしまうが、1999年という時点において著者が一定の視角から切り取った数多くのビジネスの断面は今後も手がかり的な資料としての価値を持ちつづけるだろう。経営情報システムの研究者には一読をおすすめしたい。

最後に、本書で取り上げられている事例を列記することによって、この本全体の雰囲気を紹介しておく。

以上

(文責:森田正隆、1999年12月1日)