Hayek, F. A., “Individualism: True and False,” Hodges, Figgis & Co., Ltd., Dublin, and B. H. Blackwell, Ltd., 1946.
(邦訳:田中真晴・田中秀夫「真の個人主義と偽の個人主義」『市場・知識・自由』第1章, pp. 1-51, ミネルヴァ書房, 1986.)
本稿の主題は真の個人主義の優越性を主張するところにある。各個人が自然発生的かつ自律的に行動することによって、結果として一個人の理性では設計することも不可能なような偉大な社会秩序を生み出すというのが、ハイエクがここでいう真の個人主義である。反対に偽の個人主義とは、一個人の理性を信じ、人間の設計と計画のもとに社会を運営しようという試みであり、これは真の個人主義とは正反対の社会主義あるいは集団主義に至る道筋である。ハイエクは個々人が利己心のもと自由に行動できるときに市場を通じて見事な社会秩序が達成されることを確信しているのである。
ソ連型社会主義が崩壊した今、計画と配分に基づく経済運営がいかに非合理的な結果を生み出すかということを我々はすでに目の当たりにした。一方で、南北問題や国際紛争など自由と自律だけでは片付かない大きな問題があることも我々は自覚している。とはいえ、ハイエクがいうように個人の自然発生的な協力が一個人の知性では想像もできないような社会活動を生み出すことは今なお強調に値する。自由が生み出す弊害は規制や計画によって矯正されるべきだとする安易な主張に易々と乗せられることなく、われわれは行動していかなければならない。
以上
(文責:森田正隆、1998年8月11日)