1973年に筆者によって著された論文「The Strength of Weak Ties(弱い結びつきの強み)」を発端にして多くの研究者によってネットワークにおけるWeak Tiesの分析研究が進められた。本論文は一連の研究成果について概観し、端緒を開いた著者自身が総括したものである。
著者の主張する社会的人間関係における「弱い結びつきの強み」とは下記の表で示した特徴で定義され、しばしば「強い結びつきの弱み」と対比して使用される。
強い結びつきから構成されるネットワークは関係線の密度が高く、同質性または類似性が高い。かりに、その社会で強い結びつきだけが存在したとするならば、それら同質性の高い関係の塊には求心力のみが働き、外部に存在する異質な塊との間に接点がなくなり互いに孤立してしまう結果となってしまう。そこでは、互いに情報の行き来もなく、相互理解はもちろん知識の伝播も進まない。そこで、そのままでは孤立してしまう関係の塊どうしをつなぐ「弱い結びつき」があってこそ、情報や知識は伝播し、相互理解や交流が促進されるのである。これは、個人という観点から見てもそうであり、同時に社会全体からも同様のことがいえる。
本論文は「弱い結びつきの強み」の重要性を再確認した上で、それに関する過去の実証研究をレビューし、それを踏まえて残された課題と今後の研究への展望を示したものである。
弱い結びつきと強い結びつき
Weak Ties (弱い結びつき) |
Strong Ties (強い結びつき) |
|
両端の関係 |
知人,淡い関係者 |
家族,親戚, 親しい友人や仲間 |
関係線の密度 |
低い |
高い |
両端の類似性 |
低い |
高い |
社会階層 |
より高い(傾向) |
より低い(傾向) |
ブリッジ機能 |
果たしうる |
果たさない |
ゲゼル/ゲマイン |
ゲゼルシャフト |
ゲマインシャフト |
コミュニケーション |
精巧なコード 複雑で普遍的な表現 |
使用範囲の限られたコード 簡潔で暗黙的な表現 |
関係維持に必要な時間と労力 |
少ない |
多い |
万一の危機の頼り甲斐 |
頼りにならない |
頼りになる |
新奇情報の普及 に対する貢献 |
ネットワーク間の 情報伝播に重要 |
内部での信用獲得 および説得に重要 |
(文責:森田正隆
、1998年5月13日)