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Wiseman, Charles, "Strategic Information Systems", Richard D. Irwin,1988. (邦訳:土屋守章・辻新六訳『戦略的情報システム』ダイヤモンド社,1989年)
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| ●要旨(中心的な章ごとのまとめ) |
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本書は、単なる効率化のための情報技術の利用ではなく、競争戦略の武器として情報技術を見直すという従来までのパースペクティブの転換を提唱し、豊富な事例をもとに、戦略的情報システムの概念を広く普及させたものである。 Wisemanは、経営情報システム(MIS)や経営支援システム(MSS)のような従来の情報システムの利用機会を「慣習的パースペクティブ」(p.12)と呼称した。慣習的パースペクティブとは、「基本的なプロセス(サブプロセス、もしくは課業)を自動化すること」(p.12)か、「意思決定のための情報を得ること」(p.12)のどちらかであり、「組織のプランニングやコントロールの仕事に関連する情報の流れ、データベース、レポートの作成に関連するもの」(p.12)なのである。 慣習的パースペクティブは、ロバート・アンソニーのパラダイムに端を発している。アンソニーは、戦略プランニングを頂点として、マネジメントコントロール、オペレーショナルコントロールの3つのプロセスからなるヒエラルキーの三位一体の枠組みを提唱した(pp.57-58を参照)。そして、このヒエラルキーは、「時間(長期、中期、短期)、組織レベル(トップ・マネジメント、中間マネジメント、管理者)、判断の程度(大きい、かなり、なし)、決定の重要性(大、中、小)」(p.58)の次元にそって形成される。 このアンソニーのパラダイムを応用して、MISを扱った文献で最も知られた論文である「MISの青写真」を発表したのがウィリアム・ザニである。ザニによるとMISのための重要なポイントは、「経営者の意思決定を中心にし、経営者の情報ニーズをどのように特定するか」(p.60)であり、その解決策として「組織の主要な意思決定とそれに必要な情報をはっきりさせる」(pp.60-61)ことである。このポイントからも、ザニの主張はアンソニーのパラダイムの枠内であり、「企業戦略はシステム・デザインの目標を決定すべきであり、組織の情報システム・プランニングは戦略と連携すべき」(p.61)という視点で慣習的パースペクティブの典型である。 一方、Wisemanは、「戦略的パースペクティブ」(p.14)からの視点への転換を提言している。戦略的パースペクティブの説明で、Wisemanは医療業界のメトパス社のシステムを事例として取り上げ、「情報システムへの初期投資資金を大きくすることによって、新旧のライバルに対して障壁を築いている」(p.14)点と、「もともと標準化されたコモディティ・サービスであったものを差別化して、他の検査会社に対して差をつけることができた」(p.14)点を重視し、戦略的情報システム(SIS)の展開を提示した。戦略的情報システムとは、「起業の競争戦略を支援しまたは形成することを意図した情報技術の利用法」(p.15)であり、慣習的パースペクティブとは決定的に異なるものなのである。 また、Wisemanは、マイケル・ポーターの競争優位と競争戦略の見解について、「ポーターの見解、すなわち経済学者の観点は、あまりにも狭すぎる」(p.114)と述べ、実際の企業の多種多様な競争、戦略を分析するには、「より広い実務家の構想」(p.114)が必要と主張している。彼は、以下の表のように、競争に関しての経済学者と実務家の観点が違うことを比較し、経済学者の視点だけで分析すると、Wisemanの主張する戦略的情報システムの定義には制約が課せられてしまうことを懸念している。 ![]() 同書、p.115 その後、戦略スラストの理論に基づいて、五つの基本的行為の要素別に情報技術と戦略との融合についての事例を多数提示した。差別化については、マーケティングの4Pに基づいた情報技術の貢献が例示され、コストについては、規模、範囲、情報についてのコストの削減について情報システムの戦略的利用の事例が紹介されている。また、革新については、Wisemanは「発明(創造)からはじまって模倣(普及)にいたる一連の流れの中間段階」(p.219)と位置づけ、「発明を商業的に応用する最初の段階」(p.219)と定義した。革新スラストは「企業の競争優位を増大させようとする動きであり、あるいは戦略目標の優位性を減少させようとする動き」(p.220)であり、情報システムの利用によって実現した革新の事例を多数紹介している。成長については、成長を製品と機能の二次元に分けて事例を紹介し、提携については、買収、ジョイント・ベンチャー、協定の三つの形態から豊富な事例を紹介している。 最後には戦略的情報システムの実際のプランニングと管理についての実践についても言及されていて、実務家にとっても価値のある書籍になっている。
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| ●コメント |
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本書は、豊富な事例をもとに、戦略的情報システムの理論的背景から実際の導入までを網羅する戦略的情報システムのバイブル的位置づけの書籍である。ともすれば今まで日陰の存在であった情報システムが、企業戦略を左右するような位置づけへと大きく転換し、90年代の米国産業界の復活の下支えになったと言っても過言ではないだろう。情報システムへのパースペクティブを転換させたという意味で、本書の貢献は甚大である。 しかし、Wisemanの主張する戦略的情報システムは、メインフレームを中心としたクローズドシステムを念頭においている。昨今の情報技術の進展は目覚しく、インターネットの登場で戦略的情報システムの位置づけや定義は大きくかわりつつあり、ネットワークを中心とした顧客をも巻き込んだオープンアーキテクチャが模索されている。今後我々は、情報システムに関しての新世代の戦略的パースペクティブを検討する必要があるのだろう。
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| 飯盛義徳(2002年4月22日) |