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Simon, Herbert A., "Administrative Behavior," 3rd ed., Free Press, 1976. (松田武彦・高柳暁・二村敏子(訳),『経営行動―経営組織における意思決定プロセスの研究―』,ダイヤモンド社,1989年.)
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| ●要旨 |
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本書は,意思決定過程の観点から組織について説明するものであり,行為や活動の観点からではなく,それらに先行する意思決定の複合体として組織を分析するものである. 従来,古典的管理論や経済学においては,経済人モデルないし機械モデルによって命令に受動的に反応する労働者と,受動的に最大利潤を目指す完全合理性をもつ経営者が想定され,一方で,心理学や社会心理学を基礎とする人間関係論が,感情モデルに基づくまったく非合理な人間を想定してきた.サイモンは,このような極端な立場を批判し,合理性に限界がありながらも意識的には合理的に行動しようとする経営人モデルに基づく組織論を展開した. まず,サイモンは,組織における意思決定について整理し,いかなる意思決定においても,その判断基準となる「事実的要素」と「価値的要素」が含まれるとする.事実的命題は,それが真実か虚偽かを,客観的事実に照らして決めることができる.しかしながら,「決定は事実的内容とともに倫理的内容をもつ」(p.57)のであり,決定が正しいか正しくないかについての問題には,「好ましい」かどうかという問題が含まれる.よって,決定は,その決定が目的を達成したかどうかによって,評価されなくてはならない(p.60).さらに,下位の目的は,より上位の目的を達成するための手段になり,ハイアラーキー的な構成をなしていることが多いが,これによって,行動は統合され一致したものとなる(p.79). 経営人モデルによれば,上記の通り「一人の孤立した個人が,きわめて合理性の程度の高い行動をとることは,不可能である」(p.101).そこで個人は,合理性の限界をわずかでも克服するために,順応性,記憶,習慣といった方法で対処しようとする(pp.111-113).これによって,探索を行なわなくても比較的合理的な意思決定を確保する. 「個人の選択は,「所与の」環境―選択の基礎として選択の主体によって受容された諸前提―のなかで行なわれるのであり,行動は,この「所与のもの」によって定められた限界内においてのみ適応したものとなる」(p.101).しかしながら,このことは,選択の環境を選択し,注意深く修正することで,非常に高度の統一性と合理性が達成されうることを意味する.すなわち,組織は「組織メンバーの意思決定を組織の目的に適合させ,これらの意思決定を正しく行なわせるために必要な情報を彼らに提供するような心理的環境のなかに彼らを置くこと」(p.101)ができる. ここでサイモンは,「オーソリティーの行使と組織への忠誠心の開発は,個人の価値前提が,組織によって影響を受ける二つの主要な手段である」(p.18)として,意思決定者の意思決定前提に影響を与える方法を示唆する.他にも,コミュニケーションによって与えられる助言や情報,訓練といったものも,意思決定前提に作用しうる.「訓練は,オーソリティーや助言をたえず行使する必要なしに,組織メンバーが満足できる決定に彼自身で到達できるようにする」(p.19)ものである.
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| ●コメント |
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本書の第1版は,バーナードの『経営者の役割』から約10年後(1947)の著作である.バーナード=サイモン理論と呼ばれるように,両者は,組織を集団概念によらない活動の体系としての視点からとらえている点や,単一の動機を持つ人間や,完全合理性をもつ人間の想定を修正したことなど,類似点も多く,近代組織論の双璧をなしている. 第3版の序文の中で,サイモンは,「適切な分析単位をもたなければ,正しい人間行動の理論をうちたてることは不可能である」(p.40)として,社会学諸理論がとってきた役割や行為といった分析単位について,前提や状況に依存的であり,分析単位として大きすぎると批判している.本書が,バーナード理論の意思決定部分に焦点を絞って議論していることは言うまでもないが,分析単位として意思決定前提をとりあげたことによって,より普遍性の高い説明を提供したといえる.
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林 幹人(2002年7月8日)
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