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Parsons,Talcott, "The Structure of Social Action: A Study in Social
Theory with Special Reference to A Group of Recent European Writers,McGraw Hill, 1937. (邦訳:稲上毅・厚東洋輔・溝部明男訳『社会的行為の構造 1~5』木鐸社, 1976年~1989年)
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| ●要旨 |
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本書は、ほぼ同時代に活躍したMarshall、Pareto、Durkheim、Weberといった碩学の理論を再検討し、Marshall、Pareto、Durkheimの実証主義的行為理論と、Weberの理想主義的行為理論を統合し、主意主義的行為理論を打ち立て、社会システム全体の秩序の問題を研究したものである。 Parsonsの言う実証主義的行為理論とは、「行為者が科学的に妥当な経験的知識というものを、明示的にか暗黙裡に、かれの状況に対する唯一の理論的に有意味な主観的志向様式としているといった形で行為者を把握するような行為理論」(p.128, No.1)であり、この場合、「実証主義的な極において規範的要素が消失する」(p.134, No.1)としている。彼の言う規範とは、「あるものが、(1)集合体の成員にとってか、(2)集合体の成員の一部にとってか、あるいはまた、(3)一つの単位としての集合体にとって目的そのものである(他の目的のための手段という位置にあってもよい)ということが、一人あるいはそれ以上の行為者の感情となっているか、あるいはそうした感情を内含していると見なされる場合、その限りにおいて、そのような行為体系の一側面、一部分あるいは一要素を指し示すもの」(p.120, No.1)である。 一方、理想主義的行為理論とは、実証主義的行為理論の対極をなすものであり、「規範的要素あるいは理念の「流出」あるいは、「自己実現」の過程」(p.135, No.1)と定義されており、「条件的要素の役割は消失する」(p.134, No.1)としている。 そして、Parsonsは実証主義的行為理論の極端な類型として功利主義的体系を例示し、自己の利害を行為の目的とする「功利主義が目的相互の関係を考察し損なう」(p.101, No.1)と批判した。功利主義的行為理論では、行為目的がランダムになってしまい、Hobbesの言う「万人の万人に対する闘争」(p.148, No.1)状況に陥り、社会秩序の形成が説明できない。Parsonsは、Hobbesの理論に対して、「ほとんどまったくといっていい程、規範的思考が欠如している。かれは、行為はどうあるべきかというような、いかなる理想もかかげることなく、ひたすら社会生活の窮極的条件を探求する」(p.148, No.1)と徹底的に批判した。功利主義的行為理論の矛盾を解決せんがために、Parsonsは、実証主義的行為理論、理念主義的行為理論を丹念に研究し、その限界を指摘しお互いを収斂させて主意主義的行為理論構築を行い、社会秩序の形成について分析していったのである。 Parsonsの唱える主意主義的行為理論のフレームワークは行為準拠枠と呼ばれている。行為の構造的要素には、各々が行為者の主観的な「目的、手段、条件、そして規範」(p.140, No.5)という区別があり、これらの要素の全てを特定化しなければならないとParsonsは述べている。また、これら要素間の関係づけには「行為の規範的志向、つまり(行為の)目的論的性格」(p.141, No.5)が含まれている。彼は、「行為はいつでも規範的と条件的という二つの次元を異にする要素の緊張関係のなかに置かれている」(p.141, No.5)とし、条件は行為者にとって制御することができない要素であり、「条件をその一方の端に置き、他の端には目的と規範的ルールを据え、そしてその両者を結びつけるものとして(その中間に)手段と努力(という要素)が配置される」(p.141, No.5)と行為準拠枠の要素の位置関係を説明している(目的-手段図式)。彼は、規範と条件のバランス、つまり理想主義的行為理論と実証主義的行為理論のバランスを重要視しているのであり、これこそが主意主義的行為理論の中心命題をなすものである。 さらに、Parsonsは、行為準拠枠には時間的要素を含んでいると主張している。規範は目的の選択に先立って行為を規定し、「目的は状況と同時的に、しかも「手段の選択」に先立って存在している」(p.141, No.5)とその時間軸における位置関係を示している。 行為の分析の基本単位は「単位行為」(unit act)である。彼は単位行為と行為の全体体系との複雑な関連について、「創発的属性」(p.150, No.5)が出現するとし、「単位行為のもつ属性から直接に一般化しようとしても引き出すことはできない」(p.150, No.5)とした。彼は、「経済的合理性とは行為の創発的属性であって、複数の単位行為が統合された行為体系を構成するものとして一括されたときにはじめて観察可能なものとなる」(p.151, No.5)と考え、行為図式を中心として全体を記述的側面から分析することを主張した。
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| ●コメント |
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本書は、人間行為の理論から社会的秩序の形成を描き出し、社会学史上で重要な地位をしめるものである。当時の米国社会は、大恐慌後の混沌とした状況にあった。欧州では、ナチズム、共産主義が台頭し、Parsonsは功利主義の社会的帰結が当時の無秩序状態の元凶になったと考え、主意主義的行為理論を打ち立てた。彼の理論は、今日の社会システムを分析するための重要な視点になり、昨今のインターネット上の個人の振舞いから秩序形成に至る分析ついても彼の理論は重要な示唆に富むだろう。
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| 文責: 飯盛義徳(2002年7月15日) |