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國領二郎『オープン・アーキテクチャ戦略』ダイヤモンド社, 1999年 |
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●要旨(章ごとのまとめ) |
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★本書の目的 「ネットワーク上に分散して存在している情報をいかに結合して価値を増大させることができるか、ネットワーク上での組織化の方法論について探る」(p.20)こと。 ★経営戦略としてのオープン・アーキテクチャ ●オープン・アーキテクチャの定義 「本来複雑な機能を持つ製品やビジネスプロセスを、ある設計思想(アーキテクチャ)に基づいて独立性の高い単位(モジュール)に分解し、モジュール間を社会的に共有されたオープンなインターフェースでつなぐことによって汎用性を持たせ、多様な主体が発信する情報を結合させて価値の増大を図る企業戦略」(p.21)。 ●オープン・アーキテクチャ拡大の要因 オープン・アーキテクチャ戦略は今後無視し得ないトレンドになる。その要因は以下の3つ。 ・機械系システムと人間系システムの処理能力向上のアンバランス(情報過多) →認知能力、コミュニケーション能力、信頼が希少資源となるため、これらの資源を節約する工夫が知のモジュール化で あり、モジュール同士を組み合わせるオープン・アーキテクチャ戦略の優位性となる。 ・ネットワーク普及による情報の非対称性の構造変化 →ネットワークを活用して、より消費者に近い立場で顧客情報を持つことが重要。 ・情報と媒体のアンバンドルによる情報の非物財的特性の表面化 ・限界コストゼロ ・課金コストの高さ →上記の3つの要因が相互作用しながら多様な主体が発信する情報を結合させて価値を増大させる(pp.23-25)。 ●ビジネスモデルの定義 ビジネスモデルとは、 ・だれにどんな価値を提供するか ・そのために経営資源をどのように組み合わせ、調達するか ・パートナーや顧客とのコミュニケーションをどのように行うか ・いかなる流通経路と価格体系の下で届けるか というビジネスのデザインについての設計思想(p.26)であり、情報技術の革新を現実の価値創造の仕組みとして具現化していき、新しいビジネスモデルを創造することが重要。 ●情報技術とビジネスモデルの共進化 ・情報技術がビジネスモデル設計上の既存の制約条件(ボトルネック)を取り除く ・新しいビジネスモデルが設計される。新しいビジネスモデルの設計は新たに浮上したボトルネックによって決定される ・新しいビジネスモデルのボトルネックによる限界を突破すべく既存技術の探索や新しい技術の開発が行われる というプロセスが繰り返し行われ情報技術とビジネスモデルが共進化していくが、実際はチャネルの抵抗や過去の成功体験への埋没からビジネスモデルの革新はなかなか実現しない(pp.28-30)。 ●オープン・アーキテクチャ時代のビジネスモデル どのようなビジネスモデルが採用されるかは、その産業の特性を十分踏まなければならないが、一般的には、 ・情報を大量に持つ顧客を取り込む ・購買代理 という概念が中心である(pp.33-35)。 ★協働組織化メカニズムのイノベーション ●ネットワーク経済に見る無償デジタル財の理論 ネットワーク経済における無償デジタル財が供給されやすい環境は、以下の要因による(pp.74-76)。 ・情報財の変動費の低さと課金コストの高さという特質 ・情報価値生産における連結の経済性の発生 ●インターネット技術を築いた奉仕モデル Linux等に見られる奉仕的な協働モデルが実現できるのは、以下の限定された状況下においてである(pp.83)。 ・無償で共有されることが望ましいと多くの人間が思うような、インフラストラクチャー的なデジタル財が協働の対象であること ・仕事が、多くの人間が片手間でできるように分解可能であること であり、仕事をモジュール化し、誘因と貢献の設計を行うことが重要である。 ●商業的な意図を持った無償供与の戦略 インターネット上には、無償奉仕的なものばかりではなく、商業的な意図を持ちながら、無償供与を戦略的に行っている事例も見られる(pp.84-88) ・抱き合わせ販売型 →収益を上げるべき商品の販売促進のために無料、または低価格で補完財を提供するもの。 ・広告収入追求型 →広告収入を目的に、情報提供、サービスを無償で提供するもの。 ・試供型 →β版や、お試し版の提供。また、時には興味ある顧客データベースを構築するものもある。 ★サプライチェーンの再編[水平展開型ビジネスモデル] ●垂直囲い込み型から水平展開型へ コンピュータ産業においては、垂直囲い込み型戦略から、水平展開型戦略へと大きな構造転換を遂げた。 ・垂直囲い込み型:「一部の顧客(市場)の情報化ニーズをすべて自社製品で満たす」(p.100) ・水平展開型:「全顧客のニーズの一部を満たす」(p.100) ものであり、水平展開型ビジネスモデルは、モジュール化の実現がキーワードである。そのためには、インターフェースのオープン化が重要であり、先行者利益、ネットワーク外部性が機能することでますますこの傾向が強くなる。 ★「関係性」のマネジメント[顧客参加型ビジネスモデル] ●顧客間インタラクションの諸形態 これまでは、市場に存在する関係性は企業と顧客との間のものであったが、ネットワークの進展とともに、顧客同士が横につながる関係を持つようになり、企業も無視できなくなってきた(pp.130-142)。 ・クチコミ ・相互扶助 ・開発参加 特に、相互扶助、開発参加においては、顧客たちは協働構造のコミュニティが形成され、顧客間インタラクションをビジネスモデルに取り込んだ、eBayのようなオークション・サイトが登場したり、メーカーの研究開発工程において価値生産に参加をしてもらうプロシューマーが登場した。 ★結合の場を提供するビジネス[プラットフォーム・ビジネスモデル] ●プラットフォーム・ビジネスの五つの機能(pp.147-149) ・取引相手の探索 ・信用(情報)の提供 ・経済価値評価 ・標準取引手順 ・物流など諸機能の統合 ●「信頼」のプラットフォーム 株式会社プラネットや株式会社ミスミの事例のように、ネットワーク上では、信頼が大きなキーワードになる。信頼形成には以下の4つの考え方があり、どれを重視するかでビジネスモデルの設計は変わってくる(pp.150-156)。 ・技術による解決 ・法的な秩序による解決 ・コミュニティ内における評判形成による解決 ・プラットフォーム・ビジネスの仲介による解決 ●「ことば」のプラットフォーム ・「私的なビジネスである取引プラットフォーム提供者による、明確に定義され、公開されたプロトコルの開発」 (p.157) ●結合の場を提供するビジネス 株式会社プラネット、株式会社ミスミの事例は、「信頼」と「ことば」の形成によって業界における変革を果たしている。そして、これらは以下の注目すべきポイントがある(pp.169-170) ・市場機能が株式会社という組織内部で現出していること ・標準的なプロトコルの制定が公的機関ではなく私的な株式会社によって行われていること ★ネットワーク型経済に挑む日本の針路 ●「モジュール化の思想」と「最適化の思想」の融合 ・従来の日本の強み 「調整能力の高い組織形態をとり、統合度の高い製品(製品を構成する各部位の設計、製造上の相互依存性が高い)をつくる。精密機器や低燃費車など、最適化が重要な分野で強みを発揮する」(p.177)。 ・直面している別の思想 「製品を相互依存性の低いモジュールに分解することによって、小さな会社が自律的に開発した商品が相互に統合することを可能にする。全体システムに余剰能力があることが前提となっており、最適システムにはならないが、調整の必要を下げることによって、独創的な小企業が活躍することを可能にした」(p.177)。 ●モジュール化の適さないセグメントを狙う 日本が特異な最適化が有利な領域での展開(たとえば、小型化やエネルギー利用効率等)(p.179)。 ●矛盾を超える戦略 モジュール化のメリットを生かしつつ、その限界を日本型の調整によって克服していこうとするもの(pp.180-181)。 →そのためには、開かれた組織を構築し、情報公開を実現することで、価値観、資産および文脈を共有し、経済活動に必要な信頼を提供する、奉仕的な参加が行われるコミュニティの形成が重要となるだろう(pp.190-191)。 |
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●コメント |
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本書は、ネットワークにおけるさまざまな情報を結合して如何にその価値を増大させるのか、そのためのオープン・アーキテクチャ戦略についての分析を行い、日本の産業界の今後の方向性をも提言したものである。國領によれば、ネットワークにおいては、コミュニティとの協働が重要であり、そのためには営利的、非営利的な垣根をこえて、信頼の形成が重要であると述べている(p191)。ネットワーク時代において、ますます人間同士のface-to-faceの関係は重要になり、情報技術のネットワークと人間のネットワークは共進化していかなければならない。 本書は、地域経済における産官学連携の推進にも重要な示唆を与える。オープン・アーキテクチャ戦略で示された様々な概念は、組織を超えた協働を実現するのに大いに役立つであろう。今後は、自律分散のノードで構成される一種のネットワーク組織をどのようにマネジメントしていくのか、研究の深化が重要となるであろう。 |
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飯盛義徳(2002年4月15日) |