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Barnard, Chester I.,"The Functions of the Executive", Harvard University Press, 1938. (邦訳:山本安次郎・田杉競・飯野春樹訳『新訳 経営者の役割』 ダイヤモンド社, 1956年)
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| ●要旨 |
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本書は、組織と管理との有機的な関係、組織を管理するためのリーダーシップに着目し、記述論的な観点から組織を分析し、近代組織論の祖となったものである。 Barnardは、公式組織を「意識的で、計画的で、目的をもつような人びと相互間の協働である」(p.5)と定義し、協働という概念を導入した。彼は、人間個人の特性を、「(a)活動ないし行動、その背後にある、(b)心理的要因、加うるに、(c)一定の選択力、その結果としての、(d)目的」(p.13)とし、この選択力には限界があり、意思決定とは「選択をせばめる」(p.14)ことでもあると述べ、「個人ではやれないことを協働ではやれる場合にのみ協働の理由がある」(p.24)と結論づけた。彼の定義する組織とは、「意識的に調整された人間の活動や諸力の体系」(p.75)であり、「少なくとも一つの明確な目的のために二人以上の人々が協働することによって、特殊の体系的関係にある物的、生物的、個人的、社会的構成要素の複合体」(p.67)とする協働体系の一側面なのである。 そして、組織の成立条件について、「(1)相互に意思を伝達できる人びとがおり、(2)それらの人々は行為を貢献しようとする意欲をもって、(3)共通目的の達成をめざすときに」(p.85)成立すると述べ、したがって、組織の基本的要素は、「(1)伝達、(2)貢献意欲、(3)共通目的」(p.85)であることを導き出した。これらの要素は組織成立にあたって必要十分条件であり、組織が十分に機能するためには個人の組織に対する貢献意欲の誘因が重要であり、その貢献意欲を発揮させるために共通の目的が必要であり、共通目的を普及させるために伝達が重要という相互依存関係にある。 誘因は、協働を存続ならしめる重要なキーワードであり、「誘因の客観的側面と主観的側面」(p.147)を区別することが重要である。客観的側面とは物財や貨幣等であり、主観的側面とは心的状態、態度、あるいは動機の改変である。Barnardは、前者を「誘因の方法」、後者を「説得の方法」と名付け、組織形態の違いによって誘因の違い、管理職能の違いに言及している。 さらに、伝達について、「目的をその達成に必要な具体的行為」(p.112)にいいなおすために必要な要素であるとし、適切な伝達経路の確保の場面において、リーダの必要性が生じてくることを明らかにし、単位組織の規模は、「(a)目的や技術的状況の複雑性、(b)伝達過程の困難、(c)伝達の必要度、(d)個人的諸関係、すなわち社会的状況の複雑性」(p.112)に依存する効果的なリーダーシップの制約によって決められると言及した。また、伝達の際には権威の有無が重要で、権威とは「公式組織における伝達(命令)の性格であって、それによって、組織の貢献者、ないし「構成員」が、伝達を、自己の貢献する行員を支配するものとして、すなわち、組織に関してその人がなすこと、あるいはなすべからざることを支配し、あるいは決定するものとして、受容する」(p.163)と定義した。 Barnardは、組織の存続のためには、「有効性または能率のいずれかが必要であり」(p.85)組織寿命が長くなればなるほど双方がいっそう必要になると述べた。彼のいう有効性とは、「協働行為の確認された目的を達成すること」(p.57)であり、能率とは、「構成員としての努力を提供する各個人の合成されたもの」(p.57)である。この組織存続に関する専門職務を彼は管理職能と呼称した。管理職能は、「第一に伝達体系を提供し、第二に不可欠な努力の確保を促進し、第三に目的を定式化し、規定する」(p.227)ことであり、彼の言う非公式組織が伝達との関係で重要であることをたびたび指摘している(例えばP119からの第九章「非公式組織および公式組織との関係」)。 リーダーシップについてもBarnardはかなりの紙面を割いている。彼は、リーダーシップの側面として、「体力、技能、技術、知覚、知識、記憶、想像力における個人的優位性」(p.271)と、「決断力、不屈の精神、耐久力、および勇気における個人的優位性」(p.271)をあげ、責任という言葉で表現できるリーダーシップと道徳について言及している。彼は、「創造職能」こそがリーダーシップの本質とし、実践的能力よりもリーダーの責任感の方が組織の協働には重要だと考えた。そして、「組織の存続はリーダーシップの良否に依存し、その良否はそれの基礎にある道徳性の高さから生ずる」と結論付けた。
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| ●コメント |
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本書は、人間の自由意志、限定された合理性の観点から、協働の概念を導き、組織の成立、存続、そのための管理職能、リーダーシップを分析したもので、組織論の研究における革命的位置づけとなり、この流れはSimon等の一連の研究につながっていった。彼が導入した協働や非公式組織という概念は、インターネットにおけるコミュニティの成立、コラボレーションの分析にも威力を発揮し、新しいメディアにおける組織化、リーダーシップの研究にも重要な役割を果たすと考える。
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| 文責: 飯盛義徳(2002年7月8日) |