Bernstein, Peter L.
Against the Gods, John Wiley & Sons, Inc., 1996.
(邦訳:青山護『リスク』日本経済新聞社, 1998).
本書は、リスク概念の発生および発展を、それに関わった先人たちの伝記を記す形で歴史的に叙述した大著である。本書は必ずしも学術的に緻密な著作ではないが、リスクといういわば確率に基づく概念と、それを応用した合理的な意思決定という方法論がいかにして現在の姿にまでたどりついたのかという過程を、奇抜で騒々しい生身の人間たちが形作ってきた歴史としてわれわれに提示してくれる。いわずもがな、ここでいうリスクとは不確実性のことであり、危険という意味ではない。不確実な事象に取り囲まれた人間がどのようにして合理的と思われる意思決定をおこなうことができるのか。そのために、確率論や統計学を応用して、不確実なことの不確実さの程度を情報として意思決定に取り入れるというのが、リスク下の意思決定である。本書では、博打に起源を持つ確率論から始まり、リスクや選好、効用などを取り入れ、やがて現代のゲーム理論やポートフォリオ理論、および人間の合理性に対する心理学者からの反論までを歴史の手のひらの上に乗せていく。本書に限っては要約という作業はあまりふさわしくない。司馬遼太郎の歴史小説についてあらすじを書くようなもので、それでは大事なものが失われてしまう。情報、リスク、意思決定に興味がある人はぜひ一読されたい。
なお、規範的立場と記述的立場の対立など、現代の意思決定論に関する簡単な解説については、森田正隆「個人の認知的バイアスおよび感情が組織の意思決定に与える影響」を参照されたい。
以上
(文責:森田正隆、1999年11月17日)