小川進、「流通システムの新しい担い手:ユーザー起動型ビジネスモデル」、組織科学、Vol.35No.42002年、20-31ページ.

 

本論文では、たのみこむ:()エンジン・空想生活:エレファントデザイン()の2ケースを基に、ユーザの参加者の声をもとに製品開発・商品化を行うという「ユーザ起動型ビジネスモデル」の検討を行っている。要点は以下。1)高度消費社会において、マスプロダクトでは満足できる商品を見つけ出せなくなっているという、相対的には「マニアックな」消費者の不満を解消すべく、2)彼らをまずインターネット上のネットコミュニティ(BBS)という、低コストかつ双方向コミュニケーションの可能な場に誘い出し、アイデアをコミュニティ内で競争させる。そのなかから、小数ロットながらも、いまだ市場にない新商品に対する具体的なニーズのいわば「最小公倍数」を醸成する。そして発注においては、3)多品種少数ロット生産でも開発・生産に乗りだせる駆動力のある中小企業へと結びつけ、その消費者たちへと届ける。このビジネスモデルのもつ競争力の基盤は、技術開発主導型の製品イノベーションではなく、マニアックユーザのもつニッチなアイデア(ユーザ・イノベーション)と、現在辛酸を舐めている日本の優秀な中小流通・メーカー企業がもつ機動力をいかに結びつけるというところにある。現時点でこのモデルは一定の市場をもつ大企業には魅力が薄いものであり、仮に採用されても経営資源の重点投下は考えにくい。

 

論点(疑問点):

      ここでいうユーザ・イノベーションとは?(→「発明(技術開発)」とイノベーションの違い。)

      古典的定義:技術革新とは、それが遂行される前までは異質であった生産要素を新たに結合すること、またその新結合によって既存の定常経済システムへと、簡単には回帰できない事態のこと。Schumpeter,経済発展の理論, 1926.

      少なくとも本論では、生産要素の新結合ではなく、新「知識流通」:消費者のニーズ情報とメーカーが所有する技術情報の組織化を意味していると思われる。

      さらにユーザ・イノベーションを考える参考として「情報の粘着性仮説」(von Hippel)、またはアルビン・トフラー「プロシューマー」の概念などが挙げられるが、これまで仮説としては提示されてきたもののなかなか実現できなかったユーザ・イノベーショという現象は、次々に拡大するだろうか?

      雑感として、そもそも市場規模が小さく、マニアックな(オタク)カルチャー産業、コンテンツ産業のケースとの比較をすると興味深いと思われる。マッチポンプ式生産。

      また、ユーザのアイデア競争を活性化させる・もしくはなるべくそのコミュニティに長居させる「インセンティブ」はどのように与えられているのかについての記述がない点が気にかかる。