吉川博之、内藤耕編著、『第二種基礎研究』、日経BP社、2003
2004.5.31 折田明子
要旨
現代の諸問題を解決するものとして、社会は科学技術基礎研究に期待し、要請した。基礎研究が主に公的基金によって賄われているということは、税金を通じた「新しい社会契約」が結ばれていると考えることができる。
研究は3種類に大別できる。論文を書くための第1種基礎研究、産学協同で研究を実施し、具体的な製品にするための製品化研究、そしてその間にこれまで定義されなかった第2種基礎研究が存在する。第2種基礎研究を含んだループを作らねば、「契約」の履行にならない。第2種基礎研究とは、例えばリスクマネジメントのような、評価されにくい知的な努力であり、これを突破しなければ製品にならない。
アイデアから実現の間には、いったん周囲から非難されたり忘却されたりする悪夢の時代がある。この時代は、アイデアが良くとも実現する道具立てがなく、現実化しないゆえに発生する。より本質的な原因は、科学的方法の非対称性だ。いわゆる普通の科学的研究は、個々の現象に共通する1つの法則を見出すものだが、モノをつくるときは、異なる言葉を使って違う法則で合体させるということだ。前者では現実を法則ごとに分解する(分析的科学)が、後者ではその逆(合成的科学)だ。特に後者は評価されにくい。
対象の知識と、人間にとっての意味が合体している知識を土着知識と予備、その2つを切り離し、事実を明らかにするものを事実知識と呼ぶ。近代科学は事実知識を踏襲した。その結果、分析的科学は取り残された。人間にとっての意味(=使用のための知識)が、第2種基礎研究である。第2種基礎研究だけウ壇をやるということは、一般には無理であるため、第1種基礎研究、製品化研究、その間をつなぐ第2種基礎研究を全部やる研究集団を考える。
悪夢の時期を乗り切るためには、使用知識としての第2種基礎研究を体系的に研究する必要がある。第2種基礎研究は複数の領域を扱う。科学的な知識を社会に役立たせるというループのために突破しなければならない部分である。第2種基礎研究の認知を高めることが大きな課題だ。
コメント
発見自体を評価される「夢の時代」の後、道具や周囲が追いつかない「悪夢の時代」を経て「実現」へ向かうという分析が興味深い。研究者は論文で評価を得たいし、開発者は製品化が非現実的なものを手がけられないというのも現実だと思うが、この「悪夢」の時代こそ、科学的な知識と人間を結びつける重要な時期だとこの章では言われている。
なかなか評価されず、見えずらいという状況に対し、第2種基礎研究に取り組む人を増やすには認知を高めることが確かに重要だと思う。