先端研究K 5/31 

吉川之、内藤耕編著、『第種基礎研究』、日経BP社、2003 第1

政策・メディア研究科修士課程1年 80425676 本橋 英聡 hideaki@sfc.keio.ac.jp

 

      要旨

 全ての科学者は、社会的契約の履行者として存在している。

 研究は、3種類に大別できる。一つは論文を書くための普通の基礎研究、もう一つは具体的な製品にするための製品化研究、更に、その間に今まで定義されていない第2種基礎研究というものが存在する。現実に第2種基礎研究を含んだループを作らないと、契約の履行と言うものが起きない。2種基礎研究とは、第一種基礎研究と製品化研究の間の「死の谷」を繋ぐ、評価されにくい地味で知的な努力である。研究の製品とは、研究成果が社会の中で価値になったものである。したがって一般の研究成果では不十分であり、更に進んだ研究を必要とする。ここに、第2種基礎研究の概念が必要となる。

 

 ある一つの発見・発明・アイディアが出てくると、それに対して大きな期待が出てくる(夢の時代)。しかし、それがそのまま現実の社会的価値になることは殆ど無い。その間には、人気が落ち忘れ去られ、したがって研究費の投入もなくなる「悪夢の時代」がある。この本質的原因は、「科学的方法の非対称性」に起因すると考えられる。現実を観測して様々なディシプリンの下で法則を見出す普通の科学的研究に対し、モノをつくるというのは様々なディシプリンの様々な法則を合成させていくことである。これは極めて困難なことである、しかも今までこの過程についての研究・知識体系が非常に未成熟でもあった。これが第2種基礎研究であり、その体系を確立し、確立することによって基礎研究として明確に位置づけ、知識の伝達と資金の獲得を促進する必要がある。

 

 しかし、このような第2種基礎研究はきれいな論理だけでは進まず、アブダクションという不確かで信頼性にかける論理系を使わざるを得ない。つまり、既存の科学論文の評価とは全く違う評価体系を作らなければならない。第2種基礎研究というのは、領域合成に伴う論理上の困難と戦うことである。これは、科学技術を社会に役立たせるループを完成させるための、突破しなければならない必然的部分である。

 

      コメント

 研究開発における「死の谷」の背景にある、このような「科学の論理的なメカニズム」が明らかにされたことにより、現在の基礎研究のあり方が大きく変わるのではないかと感じ、非常に興味深かった。