Yin, Robert k., “Case Study Research : Design and Methods” , Sage Publications, 2002
第3章,4章,5章の要約およびコメント
データ収集(p.59-82)
ケーススタディに要求される視点は,1)よき質問者,2)先入観のない聞き手,3)適応性と柔軟性,4)論点の把握,5)客観的な視点である。訓練では研究目的や証拠,予想されるバリエーション等について知見を広めることを重視し,次いでプロトコルについて整理している。そこでは,1)研究プロジェクトの背景や十分な論点及びそれに係る文献を含む概観,2)現場へのアクセスやインタビュー相手といった現地での手続き,3)質問,4)報告書の指針が挙げられている。特に3)について,一般的な方向付けや5つに分類される質問のレベル,データの収集と分析の間でおこる単位の混同について具体的に述べている(p.76図3.5参照)。最後に,現場の選定の重要性を指摘したうえで,試験的な事例研究が,データの内容とそれに続く手続き両方の点において,収集計画を洗練するのに役立つ点を強調している。
証拠収集(p.83-108)
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証拠ソース |
例 |
長所 |
短所 |
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@文書 |
手紙,報告書,ニュース,研究中の同じサイトに関する評価など |
安定性,強要しない,正確,幅広さ
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再取り出し可能性低,選択・報告のバイアス,アクセス度低 |
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A保管記録 |
顧客・経営記録,事前収集調査データ,個人記録など |
@文書に同じ,正確で定量的 |
@文書に同じ,アクセスとプライバシー |
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Bインタビュー |
- |
目標:トピックに直接焦点,洞察:その場の推察の提供 |
バイアス:質問の練り不足,返答バイアス,誤り,反射性:聞きたいことを返す |
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C直接観察 |
働き場所の状態,立地,技術が使われているところなど |
現実感,文脈の理解(背景), |
時間がかかる,選択的,反射性:異なる進行 |
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D参与観察 |
近所の住人,近所の商店経営アシスタント,組織のスタッフなど |
C直接観察に同じ,対人行動や動機に対する洞察に満ちる |
観察者の操作によるバイアス |
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E物理的な所産 |
技術装置,道具,工芸品など |
文化的特徴や技術運用への洞察 |
選択的,使用できること |
上記6つのソースを最も有効なものとするための3つの方針
<複数のソースの使用> 証拠の収束(収束する場合としない場合 p.100)
<データベースの作成> 構成要素は,ノート 書類,表を用いた資料,談話
<証拠の連鎖の維持> 報告⇔データベース⇔引用⇔プロトコル⇔ケーススタディ・クエスチョン(p.106)
証拠分析(p.109-140)
分析に伴う困難を軽減してくれる3タイプの一般的な戦略(理論に基づくもの,ライバルの説明,記述フレームワークの構築)と,5つの特定の分析技術(パターンマッチング,説明構築,時系列分析,論理モデル,複数事例の統合)について紹介している。筆者は,これら高度なものを使いまわすことよりも,先ず(2例ケースで)シンプルなケーススタディで経験を積むことで,それに続くより複雑で難解なトピックへ対応していけるようになると強調している。
コメント
1) アクセスの開放度,観察者のバイアスといった証拠ソースの短所は,どこまで研究の信頼性に影響を及ぼすのか
2) 証拠の収束は極めて限定された状況の下でしか起こり得ないのでは?収束しないケースのvalidityについて
3) 様々な収集・分析ケースの紹介を通じて1,2章で強調されていたリサーチクエスチョンの設定が研究設計全体に及ぼす影響について再度意識できた。
以上