Yin, Robert K., "Case Study Research: Design and Methods", Sage Publications, 2002.
2004.4.26 折田明子
要旨
【3章】
データ収集には5つのスキルが必要だ。(1)質問をすること(ケーススタディの前提)、(2)聞くこと(行間を読むことを含む)(3)柔軟性(本来の目的を見失わずに臨機応変に対応)(4)問題の把握(理論的に問題を理解する)(5)偏見を持たないこと。ケーススタディのトレーニング方法には、セミナーにおける議論、プロトコル構築とレビューがある。
ケーススタディ・プロトコルは以下の4つを含む。第一にケーススタディの概要。プロジェクトについて述べる(目的、スポンサーなど)。第二に、フィールドにおける手順。データ収集の注意点が挙げられる。第三にケーススタディにおける「質問」。ケーススタディの本質である。レベルを設定し、関心を反映させる。データ収集の単位と分析のための単位が混乱することがある。 第四にケーススタディのレポート手引きがある。データ収集にあたっては、ケースをスクリーニングしたり、パイロットケース(事前テストとは異なる)を実施したりする。
【4章】
証拠について6つ重要な点がある。(1)文書:様々な形式がある。(2)アーカイブ記録:利用価値はケースによって異なる。(3)インタビュー:最も重要なものの一つ。「回答」だけでなく「情報」を得ることができる。(4)直接観察:追加情報をもたらす。信頼性を上げるには観察者を増やすこと。(5)参与観察:参加によってしかとれない証拠もあるが、観察における先入観の問題がある。(6)物的証拠:それほど適切ではないが、理解の手助けとなる。データ収集には3つの原則がある。第一には複数の証拠を使うこと。第二にはケーススタディデータベースを作ること。第三には「証拠の連鎖」をメンテナンスすることだ。
【5章】
証拠分析には3つの戦略がある。一つは理論的提案に拠ること。二つは対立解釈を考慮すること。三つはケースの説明を展開すること。主な分析テクニックとして5つ上げられる。(1)パターンマッチング:パターンが合致すれば内的妥当性が強められる。(2)説明構築:ケースの説明を積み上げて分析する。(3)時系列的分析:時間を越えて追いかけるものを明確にする必要がある。(4)論理モデル:ケースの評価に用いられる。(5)クロス・ケース統合:複数のケースを対象とする。より分析の質を高めるためには、全ての証拠に当たったことを示し、全ての対立仮説について述べ、最も重要な側面について述べ、自分が熟達した知識を使うことが必要である。
コメント
3章では例示を含めつつ、データ収集の手順が書かれているが、個別に取らねばならないデータを確認するために役立てそうだ。特に、ネットを介したコミュニティに対する取材では、同じプラットフォーム上で「参加」し観察する機会が多いと感じているが、その際に気をつけねばならないこととして「偏見」の問題が示唆されている。
evidenceの信頼性を上げるための原則が書かれており、データを取りっぱなしではいけないことを痛感した。5章の分析については、「明確なマニュアルはない」とあるが、踏み外してはいけないポイントが押さえられているが、これらはテクニックというほど細かく書かれておらず、それぞれのケースに合わせて試行錯誤しなくてはならないように思える。