Yin, Robert K., "Case Study Research: Design and Methods", Sage Publications, 2002.
Chapter1 And Chapter2 Summary
1章
Yinは、社会科学における5つの調査戦略−実験、観察、資料分析、歴史研究、ケーススタディから構成−の1つとしてケーススタディを位置づける。これら調査戦略において共通して言えることは、これらの戦略は相互に関連しあっていること、同時にリサーチクエスチョンの特定が調査の最初のステップになることである。リサーチクエスチョンが、適当な研究手法を決めるとした。
そうした中で、Yinはケーススタディを以下に定義した。
l 「実社会における環境の中に存在するある特定の現象を調査する手法であり、その環境と現象の関係性が明確にできない時に適する手法」
l 「関心の領域がデータ収集地点より多い時に対応する手法」
l 「複数の論証源に準拠することができる手法」
l 「事前に確立された理論からデータ収集・分析へ結び付けていくことに秀でた手法」
加えて、リサーチクエスチョンとの関連を考慮に入れ、ケーススタディをリサーチに実際に使用すべき状況として@How、Whyのリサーチクエスチョンが提起されるとき、A調査者が該当事象をコントロールできないとき、B研究対象が実社会での事象におけるある特定な現象を対象とするとき、だと指摘した。
2章
リサーチデザインとは、収集されたデータをリサーチクエスチョンに結びつける論理である。そしてリサーチデザインには、5つの項目−リサーチクエスチョン(ケーススタディの場合はHowとWhy)、研究のプロポジション(命題)、分析の単位、データを研究の命題に関連させる論理、発見した解釈が通用される範囲の特定−が含まれるとした。
また、社会科学に調査方法として認められる上で重要な考察項目として、本書では以下の4点が引用されている(Kindder&Judd,1986)。第一に何を検証すれば、提起する理論が実証できるのかの判断からなる構造的有効性、第二に内部因果関係の判断からなる内部有効性を提示した。例えば“xが言えるからY が言える”との論理展開において実際は、外部要因としてのZの影響が認められる場合、x→Yの論証は認められないことになる。
そして、第三に当該研究で検証されたことが、ほかの事象においても言えるかを判断する外部有効性、更に第四に主として先行研究の上に新たな研究を構築することにより判断される信頼性を提示した。
また、シングルケーススタディとマルチケーススタディの比較も行っている。シングルケースは、@既存理論の更なる実証及び適用範囲の拡張を目的とした場合、A類似事象が少ない場合、B(事前に科学的分析が行われていない萌芽的事象を対象とした場合においてその優位性を持つとし、一方マルチケースは、再現性の高さがその特色(但し、サンプリングロジックではない)とし、それにより研究成果の一般化という視点で見た場合優位性が高いとした。
コメント
Yinのリサーチデザインは、1つの前提の上で構成されている。それは、ある理論を事象において実証する、という理論実証主義に基づいたものである。しかし、実際の社会事象においては事象→理論の順番も存在する。その意味でケーススタディを用いた研究手法においてはYinが扱っていないケーススタディを用いた研究手法も存在すると考えられる。
梅嶋 真樹(2004年4月19日)