安田雪『ネットワーク分析』,新曜社,1997

2004.12.06 折田明子

 

要旨

 本書は、行為者の行為を個人的な属性からではなく、その行為者を取り囲むネットワークによって説明する手法として、「ネットワーク分析」について説明する。ネットワーク分析は、行為を決定するのは、行為者を取り囲む関係構造だとする。ネットワークは、グラフや行列によって記述できる。

 ネットワークがカバーする社会的領域は、ネットワークの構成者がどのくらい社会的に重なり合った所属に属しているかによって変化する。異なった種類の社会的なサークルの連結は、モザイク状に社会の全体的な統合を促進する(ジンメル、グラノベッター)。これはネットワークの密度からも導ける。

 本書は、家族間関係、企業間関係、就職活動、コミュニティ、昇進速度などの例を挙げながら、ネットワーク分析の可能性を示すものである。

 

 コメント

 

本書では電子掲示板のコメントチェーンが紹介されている。この事例は、特定のフォーラムという場におけるものだ。現在では、こうしたインターネット上のコミュニケーションがカバーする範囲は、ひとつの場にとどまらず、拡大していると言えるのではないか。

例えばblogtrack back(リンクしたことを相手のページに表示させる)は、元々知り合いでなかったとしても、検索やリンクをたどるなどして見つけた相手との関心事の共有を可視化する。必ずしも人間関係の媒介を必要としない、こうした関係は、一種のweak tieと呼べるだろう。さらに、そうして生成されたリンクを辿って、元は別のネットワークに属していたノードが接続してくる可能性が発生するのだ。例えば、SNS内のコミュニティのように、興味を通じて知り合った人が、互いの可視化された友人ネットワークを見て共通の知人を見つける、ということもありうる。

 

一方で、インターネット上では、自分の気に入った記事や情報しか読まなくなるという見方もある(サンスティーン)。これは、「密度の高いネットワーク」として本書で書かれていることに関連する。例えばRSSリーダなどは、チェックしたいURLを登録しておけば更新を知らせてくれるので、ここに登録したものだけをチェックすることになる。多くの人からチェックされる(=見られる)ところは、多くのincomingリンクを持つ「ハブ」になる。多くのノードとつながる「ハブ」は、さらに正のフィードバックにより(バラバシ「ベキ法則」)、人気を上げていく。

 

本書の中で、もっとも興味を引いたのは「弱い紐帯の力」だ。接触の少ない疎遠な人との関係は、むしろ異質な社会圏を連結させる「橋渡し」の役割を果たすという。上記のようなインターネット上において、こうした弱い紐帯の力を活用するには、2つの見方があると思う。1つには、本書と同じく、人間関係の密度における「疎遠さ」から、異質な情報を得ること。もう1つには、可視化された興味別のネットワーク(必ずしも人間関係と同じではない)における「疎遠さ」だ。後者は、例えばネット上の趣味のコミュニティ内で頼るだけでなく、趣味のコミュニティとは関係ないが別のコンテクストで知り合いの人に頼る、など。これらをどう組み合わせ活用するかに関心がある。