安田雪、『ネットワーク分析:何が行為を決定するか』、新曜社、1997.

 

[要旨]

 ネットワーク分析とは、「行為者の行為を個人的な属性からではなく、その行為者を取り囲むネットワークによって説明する(p. v)」ことを目的として、「さまざまな『関係』のパターンをネットワークとしてとらえ、その構造を記述・分析する方法(p. 2)」である。行為者とは、人間のみならず、企業組織、産業、地域、国家等の何らかの行為を行い得る主体のことを指す。

 ネットワーク分析の基本的考え方では、「行為を決定するのは、行為者を取り囲む関係構造(p. 8)」であるとされている。また、分析対象は、個人のみならず、企業や国家など、よりマクロなレベルのものまで幅広いものが含まれる。

 ネットワークを理解するためには、分析対象となる集団の「ネットワーク構造」を把握することが必要となる。これには、ネットワークの全体像を把握してから内部の行為者の特性を考察するソシオ・セントリックネットワークと、特定の行為者が構築しているネットワークを特定し、行為者を中心としたネットワークを掘り起こしてゆくエゴ・セントリックネットワークの2アプローチがある。この2アプローチは、分析対象として、行為者とネットワークとの間の関係構造を選定している点で共通している。

 ネットワーク構造は、行為者を点(ノードとも呼ばれる)で、行為者間の関係を線(紐帯とも呼ばれる)で表し、それを結んだグラフによって表すことができる。グラフには関係に方向性のない「無向グラフ」と、方向性のある「有向グラフ」とがある。実際に存在する行為者間の関係の数をグラフが取り得る関係の最大数で割るとグラフの密度を求めることができる。また、ネットワークのもつ中心性は、「ノードのもつ紐帯の数、ノードの間の距離、ノードの持つ媒介性(p. 83)」によって計測することができる。

 ネットワーク分析の応用研究としては、パソコン通信上で展開される仮想会議室のネットワーク構造の分析、就職情報の獲得ルートと就職の成否に関する分析、夫婦のネットワーク分析、態度変容の過程に着目したイノベーション普及の研究、コミュニティ、パーソナル・ネットワークの型と昇進速度の研究、産業間ネットワークと市場形成の研究等、個人といったミクロレベルのものから、企業、産業、国家間といったマクロレベルのものまで様々なものが存在している。

 

[コメント]

 ネットワーク構造をスタティックに記述することの有為性は高い。しかし、ネットワーク分析でいうところの行為者が、個人の場合と企業や国家の場合とを比べると、それら行為者の行動が影響を及ぼす範囲、影響力が異なることから、同じフレームワークを用いて分析することが可能なのかどうかという素朴な疑問を持った。こと、企業や国家が行為者となる場合、そこに属性の要素が大きく作用する可能性はないのだろうか。

 

              2004126 藤井 資子)