山倉健嗣、組織間関係 : 企業間ネットワークの変革に向けて、有斐閣 , 1993年.
[要旨]
まず,組織間関係論の歴史的展開を確認し,本書が扱う組織間関係の対象・射程・可能性について紹介する。次に,組織間関係における『基本的視角』を明らかにするうえで,資源依存・組織セット・協同戦略・制度化・取引コストの5つのパースペクティブの変遷の検討を行った後,続く第3章から5章にかけて,本書が注目する組織間関係の側面について言及する。すなわち,1)組織間の資源・情報交換(資源依存とコミュニケーション),2)組織間のパワー関係(非対称関係),3)組織間調整メカニズム(組織間の意図的共同行動),4)組織間構造(組織間の分化と統合の枠組み),5)組織間文化(組織間で暗黙のうちに了解されているものの考え方や見方)がそれである(p.22)。第6章では,「組織の組織」を取り上げ,よりマクロな社会レベルにおける組織間関係論に対する要請を検討し,第7章では組織間変動と変革を扱いダイナミクス分析を行い,最後に経営戦略,企業連携,企業発展,地域社会を扱い,戦略との関連から組織間関係を解明している。
本書は,『互いに自律し,しかも異なる目標を持ちながら相互依存している組織間関係』(p.23)を扱い,階層でも市場でもない社会システムの解明に貢献するものである。理論的な核は,組織間関係の調整メカニズムを検討する第4章,および組織間変動と変革を検討する第7章においている。第4章では,組織の環境に対する自主的な行動(組織の環境操作行動)を,資源パースペクティブを下地に自律化戦略・協調戦略・政治戦略に類型し,さらに,協調的相互関連性の変化から生じる環境対応能力の減退と,それに伴う意思決定の不確実性や新規参入,環境変動といった,こうした組織間調整メカニズムがもたらす意図せざる結果(逆機能的側面)について(p.119),これらの問題への対応の限界とともに言及している。第7章の動態的分析では,組織間変動を,『組織間調整メカニズム,組織間構造,組織間パワー,組織間文化といった全体的変動としてとらえ』る新たな組織観を提示し(p.185),後半で「組織化過程」を明らかにするうえで,問題設定・方向設定・実行フェーズからなる組織間協力プロセス・モデルを設定している。
[コメント]
本書は,経営戦略のみならず,地域社会をネットワークの観点から分析するものにとって,多くの理論的背景を提供してくれる。いかにして「変動」を捉えるかについて,全体としての複雑な変動は,何と何の変動が複合的に作用していることによるのか,何をみて変動をはかるのか,を明らかにし,変動前後の状態比較に陥ることなく,そのプロセスを徹底的に記述することの重要性を再認識できる。
(2004年11月30日 坂井 健太郎)