山倉健嗣、『組織間関係―企業間ネットワークの変革に向けて』、有斐閣、1993


【要旨】

本書は、現代企業、現代社会を解くキー・コンセプトといわれる組織間関係について、文献レビューベースであるが、それまでの組織間関係論の系譜を整理・体系化しつつ、課題を探り、著者の独自理論の展開を加えたものである。

本書が書かれた当時の90年代初期は、系列、企業集団、官民協調、企業城下町といったそれまでの日本型組織についての問い直しがはじまっていたときであり、著者は、そうした現実の動向を、組織間関係論の本質的認識の上で探るべきだとの観点から、組織間関係における分析のさまざまな視点を検討し、組織を”科学的に”とらえる分析用具を提示し、さらに、その適応例として経営戦略や地域社会も取り上げる。

まず、組織間関係の系譜を踏まえ、組織間関係とは何か、その理解はいかなるパースペクティブにたって展開していくのかを明らかにしている。まず、パースペクティブを、資源依存型、組織セット型、協同戦略型、制度化型、取引コスト型の5つに整理する。著者は、基本視角を資源依存パースペクティブに負いつつ、検討を加えている。その作業に基づき、組織間パワー、組織間コミュニケーション、組織間構造、組織間変動、「組織の組織」といった組織間関係を分析するための基本概念を論じている。 

本書前半で、著者は、多様な組織間関係を、@組織間の資源・情報交換(資源依存とコミュニケーション)A組織間のパワー関係(非対称関係)B組織間調整メカニズム(2つ以上の組織間の協力の仕組み)C組織間構造(組織間の分化と統合の枠組み)D組織間文化(組織間で暗黙のうちに了解されているものの考え方や見方)の視点で取り上げ、一定の時点における静態的分析として展開する。

ここで著者は、分析の立場に触れる。つまり、「われわれは、組織の集合体がそれをとりまく環境によって決定されると考える(環境)決定論の立場ではなく、それが環境から独立した主体として、むしろ自らを構成していく自由意思論の観点を重視したい」としている。次に、複数組織の集合体である「組織の組織」論の展開に移り、主に諸組織を調整・媒介する「媒介組織」について焦点を当て研究を整理し、組織間システム統合について明らかにしている。

本書の後半部は、組織間関係の動態的テーマを取り扱っている。「組織間変動と変革」の章では、組織間関係が、なぜ、いかに変動し、変革していくのかというダイナミックな側面を検討する。また、「経営戦略と組織間関係」について、経営戦略論と組織間関係論との接合をもたらすテーマとして企業連合あるいは提携の問題が取り上げられ、マーケティング・チャネル論も検討される。「企業の地域戦略と組織間関係」では、地域社会を「組織間パワーとネットワーク」の観点から考察、組織間関係としての企業‐地域住民関係、地域社会における企業のパワーの成因が明らかにされる。

 著者は、最後に、展望として、企業の国際化、産業システム、現代社会に焦点をあて、組織間関係の可能性を提起している。

【コメント】

本書の刊行後10年余、現ネットワーク社会に特徴的に広がっているオープン・アーキテクチャ型組織や企業活動は、組織間関係の新たな展開を引き起こしているが、本書の提示するパースペクティブは、組織に関する“科学としての客観的な方法”として、この状況の解明にも基本的に役立つ。だが、その変化のダイナミズムを全体として捉えるためには、いまだに、著者も述べるごとく、組織間関係論で展開しなければならない課題は多いであろう。ここでも、科学としての客観的領域と実践としての主体的領域を総合していく、「組織間関係のデザイン学」が求められているのではないだろうか。                  (20041129日 織田勝也)