山倉健嗣、『組織間関係−企業間ネットワークの変革に向けて』、有斐閣、1993年.
[要旨]
本書は、組織間関係の理論的解明を目的として、組織間関係論の系譜をもとに、組織間関係を分析するための基本概念を論じている。具体的には、資源依存パースペクティブを主たる機軸に据え、組織間のパワー関係、資源依存とコミュニケーション、組織間調整メカニズム、組織間構造、組織間文化という組織間関係を分析するための基本概念が論じられている。
組織間関係とは、一義的にはヒト・モノ・カネ・情報を媒介とした、組織と組織の何らかの形のつながりのことを指す。これには、単なる資源の交換を超えた組織間の共同行動や共同組織の形成(合弁や業務提携)、組織間構造も含まれる。
源依存パースペクティブは、組織を基本分析単位とし、組織の視点から組織間関係を考察する。ここでいう組織とは、多様な利害関係者の「連合体」のことである。組織はその存続のために外部環境から諸資源を獲得しなければならないため、自己充足的な存在ではない。また、組織は自らの自律性を保持し、他組織への依存を回避しようとする一方で、他組織を自組織に依存させ支配範囲を拡大しようとする行動原理を持つ。
組織間関係の形成・維持過程ならびに交渉過程が扱われていないこという資源依存パースペクティブの問題点の一つは、組織間関係の形成を組織内外の接点に位置する対境担当者の行動によって説明しようとする組織セット・パーペクティブによって補完される。また、資源依存パースペクティブに対するオルターナティブとして、組織の集合体やグループを分析単位とし、個別組織を構成単位とする組織の協同体を解明することを目的とする協同戦略パースペクディブがある。この他、組織が制度化された環境に埋め込まれていることを前提として組織間関係を分析する制度化パースペクティブや、組織間関係に対し経済学的なアプローチをとる取引コスト・パースペクティブがある。
組織が他組織に依存しているということは、他組織が組織に対してパワーを持っていることを意味している。これは、その組織が必要としている希少で獲得困難な資源を、他組織が保有し供給可能であることを指す。資源依存パースペクティブに基づき本書で整理されている組織間の資源依存の3類型には、双方依存、双方独立、一方的依存がある。
組織間コミュニケーションとは、「二つ以上の組織間の情報交換および意味形成のプロセス(p.72)」である。組織間関係においてコミュニケーションが果たす機能としては、組織間調整、価値共有、取引の円滑化があげられる。組織セットパースペクティブでいうところの対境担当者は、組織間コミュニケーションの媒体として、他組織との連結という機能を担うとともに、他組織からの脅威に対し組織を防衛する境界維持機能も担っている。
組織間調整メカニズムは、組織どうしが協力関係を作り上げていくメカニズムのことをいう。組織は、自立化戦略、協調戦略、政治戦略といった調整メカニズムを通じて、他組織との関係の安定化をはかり、組織の存続を維持する。これは、「当該組織にとって他組織という環境の不確実性を減少させ、環境の安定化をはかる(p.91)」組織の環境操作行動としてとらえられる。
組織間構造とは、組織間の分化と統合の仕組みである。これは、パターン化され、かつ安定しており、緩慢に変化する。組織間構造に着目することで、組織間における関係維持のための規則の生成・維持を明らかにすることができる。
組織間文化とは、個人と組織を媒介する概念であり、組織成員に共有されている価値や規範・信念といった行動様式のことを指す。
[コメント]
本書は、組織間関係論に関する議論の系譜をまとめ、その上に新たな議論を展開している。要約にまとめた静態的な分析のみならず、組織間関係の変容という動態的な分析を展開している点が興味深い。 (2004年11月29日 藤井 資子)