Wiener, Norbert, “The Human Use of Human Beings ? Cybernetics and Society”, Houghton Mifflin & Co., U.S.A., 1950. (鎮目恭夫・池原止戈夫(訳),『人間機械論』,みすず書房,1979年.)
[要約]
機械及び社会の制御、自動機械の開発、言語、神経系の考察、科学方法論などを含む、通報理論にかかわる複合的な思想をサイバネティックスと呼ぶ。この視点から、「人間の非人間的な利用」を問題意識とし、「人から機械へ、機械から人へ、および機械と機械との間の通報がますます大きな役割を演ずるに違いないことを示す」(P.10)ことが本書の主題である。サイバネティックスの核心となる観点は、エントロピーと呼ばれる非組織性あるいは無秩序の度合いを表す量であり、これは増大していく特性を持つ。これに対して情報(量)は組織性あるいは秩序性の度合いを表す量である。
第1章では、人間と動物および機械の通報の発信・受容行動比較から、テーピングおよびフィードバック機能を抽出し、上記の主題内容について概観する。続く章では、過去400年を特殊な時期と位置づけ、進歩という考えを「未来に対して新しい可能性を開くだけでなく、新しい制約を課す」(P.45)と捉え直し、3章では、人間とアリの比較を例に、特にフィードバック(学習)機構に関連して、「機械の構造も生物の構造も、その機械または生物から期待しうる性能を示す指標である」(P.57)と主張する。以下、4章から6章では、言語、有機体としての通信文、法律とコミュニケーションについて、サイバネティックスの視点からその仕組みを解説する。言語については、人間のもつ3段階の通信回路を説明し、チンパンジーと人間の比較からを、「言葉をしゃべることは(中略)人間の達成した最も著しい特徴である」との見解を下す。また、法律とコミュニケーションについては、「ゲーム」の側面からの考察を紹介している。7章では機密と社会政策について言及し、変化する世界の中で、情報の貯蔵はその価値の低落を避けられず、したがって利用すべきものと主張する。9章では、機械の発展の方向性と、その人間社会への衝撃を、第一次産業革命を成し遂げた蒸気機関と、筆者が第2次産業革命と呼ぶ真空管との比較を通じて考察する。これら2つの衝撃の差について論じるには時期尚早だとしながらも、来るべき完全な自動化時代を想定し、自動車工場や高速度計算機の例を示しながら、その現実性を説得したうえで、「自動機械は(中略)まさしく奴隷労働と経済的に同等のものである」と警鐘を鳴らしている。
[コメント]
家内制工業から工場工業へのシフトを、蒸気機関の供給電力と当時の需用電力のバランスから説明するといった、工学的見地から、産業革命のもたらした社会的帰結を論じている点が興味深い。
「機械」は、手動によって賄われる機能を置き換える以上に発展を遂げている。こうした「機械」による社会的帰結を考察する、筆者が論じるには時期尚早だとした衝撃の差は、モジュール化、有機体の再構築といった形で表出しているのではないか。
(2004年10月18日 坂井 健太郎)