Wiener, Norbert,  “The Human Use of Human Beings ? Cybernetics and Society, Houghton Mifflin & Co., U.S.A., 1950. 

(鎮目恭夫・池原止戈夫(訳),『人間機械論』,みすず書房,1979年.)

2004.10.18 折田明子

要旨

 著者は、人間がその資質を低く用いられ機械化される「非人間的な利用」に対する抗議として本書を書いた。自動機械は、奴隷労働と経済的に同等だと指摘し、産業革命は両刃の剣であり、新しい奴隷機械の崇拝ではなく、人々の余暇の増大のために利用する義務があると主張している。

また、「サイバネティクス(舵手)」という言葉は、本書を元にしており、言語、機械、計算機、心理、神経と大きな領域にわたる「通報」を表す言葉として用いられ、動物と機械の情報伝達と制御の理論をさす。本書後半では人間の感覚機械を、機械で置き換える前提で分析している。

われわれは、他から与えられるもしくは他に与える情報を利用することで、環境の変転に対して自分を調節し、効果的に生きていく。実際に経験したことに基づく制御が、「フィードバック」であり、これを通じてエントロピーが制御される。外界から集めた情報は、その個体の行動に役立てられるために、内部の変換機構を通じて変換される。機械的な学習過程は、人間の学習過程には対応しない。条件反射が形成される際には、神経の相関による反応の誘発が含まれる。例えばシナプス通路(方向を決めずに発される通報が作用されると予想される)が開くと言うものだ。

 通信を媒介するのが言語であり、人間だけでなく他の生物、機械にとっても重要である。機械にむけられた言語は、第一に言語の音声面、第二にセマンティックな受信、第三に翻訳の段階からなる。セマンティックな受信には記憶が必要だ。抽象したものを検出するには、一時的に切替え装置を構成せねばならず、その際にニューロンを組み立てる。第三の段階は行動段階と呼ぶことができ、個体が受け取ったものが外部から観察できる活動へ翻訳される。例えば、チンパンジーが言葉を話せないのは、セマンティック段階における障害であり、次の行動へ転化させる機構が備わっていないからである。

 ホメオスタシス(恒常性)は、負のフィードバック(出力を一定に保つためのフィードバック)機構である。個体を区別する自己同一性を考えれば、仮に人間の個体を走査し伝送しようとしたところで、その組織は破壊される。通信とは通信文を伝送することであり、物の輸送はその一つの方法に過ぎない。法律は概念と技術の問題を含む例としてあげられる。どの事件の判決も、その法律の過去の判例と矛盾させないように発展させなければならない。

 情報が社会に寄与するためには、1)社会が従来から共有する情報と内容的に違うことを言う 2)古典のごとく大衆がその内容に通じる ことが必要である。情報は貯蔵するよりも利用することが大切だ。

 

コメント

法、社会、技術と多岐な場面における「通報」について説明しつつも、著者は一貫して「人間は機械化されるべきではない」と主張する。新技術の発展も、人間のための利用であるべきと書かれる。人の感覚や機能を機械で置き換えることは可能か。個体内の通報および出入力の仕組みを明らかにし、それを再現することが可能であったとしても(本書でも聴覚などについて解析が書かれている)、あくまで人間の資質は尊重されるべきという。それは個体内だけでなく、法体系、社会システムにおいても当てはまることではないか。