竹田陽子、『プロダクト・リアライゼーション戦略−3次元情報技術が製品開発組織に与える影響』、

白桃書房、2000

 

2004.11.1 折田明子

要旨

 本書は、3次元情報技術(CADCAECAM、ラピッド・プロトタイピング)が、製品開発組織に与えるインパクトを扱っている。これらの技術は、これから作る製品をリアルに見せ、人々のコミュニケーションを喚起する性質を持つ。その結果、製品の形を実現する「プロダクト・リアライゼーション」を支援する道具として位置づけている。コミュニケーションの変化が組織や産業構造に及ぼす影響を論じ、3次元情報技術を戦略的に生かすことを課題としている。本書は、(1)現状認識と理論検討、(2)実証研究、(3)ダイナミックプロセスにむけて の三部から構成されている。

 1990代に普及し始めた新世代3次元CADは、その使用により、素人でもどんな形状の製品か分かるようになったこの技術は、(1)プロセッサー機能(あらかじめ定めた前提に従った処理を行う)と(2)メディア機能(人と人とのコミュニケーションを支援する)の二面性を持つ。3次元情報技術により、複数の部門が協力して一つのアウトプットを出すことが可能になった。その結果、部門間の相互調整を前倒しするフロント・ローディングが促進されるというのが、本書の仮説だ。メディア機能により、組織内の問題解決における多義性を調整するコストが削減できるとしている。技術の導入戦略においては、情報技術の特性を引き出すことが求められる。メディア特性の見方では、技術固有の性質は状況によっても変わらないといわれていたが、現在ではメディアに対する社会的な認知や組織とのコンテクストに左右されるという見方が出てきている。

 実証研究では、情報技術の導入戦略が部門間コミュニケーションのパターンに及ぼす影響と、さらにパフォーマンスに及ぼす影響を明らかにする。まず第一の仮説として、情報技術のメディア機能が相互調整に活用されていればフロント・ローディングが起こるとされ、逆に情報技術のメディア機能が相互調整に使われていないならば、上記の関係は見られないとする。次に第二の仮説として、情報技術のメディア機能を活用したプロジェクトでは、図面ベースのプロジェクトに比べて開発パフォーマンスに対する効果が見られるとしている。ケーススタディの結果、第一の仮説は、設計・金型間では支持されたが、デザイン・設計間ではむしろ工程の一体化が進んだ。第二の仮説は、パフォーマンスの向上が見られ、仮説は大枠で支持された。

 ケーススタディからは、組織特性として、各部門が蓄積している知識・知識獲得に関する戦略と、機能部門別の分業形態という変数が見出された。3次元情報技術は、機能の内部統合および外部資源の活用を支援する。一方で、従来の分業とは不整合を起こしつつも、変化をもたらす。本書の理論的貢献は、メディア機能による組織ユニットの支援メカニズムを明らかにし、情報技術の導入戦略の存在を示し、技術と組織の相互作用による進化モデルの手がかりを発見したことにある。

 

コメント

「生きた情報の流れを作り出すこと」と結ばれているが、情報技術がその内部での処理能力(プロセッサー)としてのみならず、技能を持つ人と持たない人のギャップを埋める役割を果たすことを示している意味で、本書の視点はユニークだ。画面の中の画像をバーチャルと呼ぶ向きがある中で、その意味を「Realize」とし、協働を支援するものだという主張に同意する。