竹田陽子、『プロダクト・リアライゼーション戦略:三次元技術が製品開発組織に与える影響』、白桃書房、2000.

 

[要旨]

 「本書は、3次元情報技術(略)が製品開発組織に与えるインパクトを扱っている。」(p. i

 1990年代に入り、新世代の3次元CADが不住し始めたことから、従来2次元の図面を元に行われていた製品開発プロセスが、3次元情報技術を元にしたものへと移行し始めた。3次元情報技術の特徴は「あらかじめ定められた前提(プログラム)に従って、データのコード化、伝送、加工、蓄積処理をおこなうプロセッサー機能だけでなく、人と人とのコミュニケーションを支援するメディア機能を備えていることである。」(p. v)であり、本書では、「3次元情報技術のメディア機能が、機能部門間や企業間のコミュニケーションの前倒し現象、すなわちコミュニケーションのフロント・ローディングを推進している」(p. v)という主たる仮説が実証研究を通じて検証されている。そして、前述の仮説が検証された後、導入戦略の違いによる差異、情報技術の導入によるパフォーマンスの向上について検証が行われ、最後に情報技術の選択および情報技術の選択によってもたらされた効果と、組織特性のかかわりについて分析している。

 プロセッサー機能とは、「情報の送り手または情報技術の操作者があらかじめ定めた前提に従って、コード化、伝送、加工、蓄積処理をおこなう情報技術の機能」(p. 11)のことを指し、メディア機能とは、「データの意味解釈が受け手の反応にゆだねられており、人と人とが相互作用を通じて意味や意思を伝達することを支援する機能」(p. 12)のことを指す。フロント・ローディングとは、Thomke and Fujimoto (1998)の定義を採用し、「(設計上の)諸問題を製品開発のより早い時期に認識し、解決することによって、開発期間とコストの削減を図る戦略」(p. 25)とされている。

 「(1)情報・AV機器の外装部品で、(2)3次元設計を初めて導入したプロジェクトにおける、(3)機能部門間(デザイン、設計、金型)の相互調整、に焦点をあてて、(4)過去の同等のプロジェクトと比較するケース・スタディを6例(11社で6社)」(p. 61)について行った結果、メディア機能が部門間コミュニケーションのフロント・ローディングをもたらすという仮説は、設計・金型部門では支持され、デザイン・設計間では、デザイン工程と設計工程の一体化が進むという分業構造の変化が確認されている。導入戦略による差異としては、プロセッサー機能のみを活用した事例と比較することにより、3次元情報技術の効果に違いが現れるということが示されている。また、メディア技術の活用によるパフォーマンスの向上に関しては、部門間の相互調整の減少を通じ、開発期間の短縮という形で確認されている。

 事例研究を通じて抽出された情報技術の選択とその効果に影響を与えうる組織特性要因とては、次の2つがあげられている。第一に、ある組織ユニットが他の組織ユニットが持つ知識を必要とする場合に、メディア機能が必要とされ、既に組織間や部門間のインターフェイスに関する知識が十分に蓄積されている場合には、メディア機能は必要とされないこと。第二に、3次元情報技術の利用が既存の機能部門間の分業形態と不整合を起こすこと。すなわち、3次元情報技術の導入には分業構造の見直しが必要になる。

 

[コメント]

 3次元CADというそれ自体が強いメッセージ性を持つ新技術に着目し、それが既存の製品開発組織に与えるインパクトを探った本研究は、マルチケーススタディの方法論としても参考になる。

 

             2004118 藤井 資子)