Orlikowski, W.J. and Baroudi, J.J., "Studying Information Technology in Organizations: Research Approaches and Assumptions", Information Systems Research, Vol.2, 1991.

2004.5.24  折田明子

要旨

 

 この論文は、1983年から1988年にかけての155件のIS研究を調べたものである。IS研究は単一の理論的展望に根ざしているわけではないにもかかわらず、IS研究者によって研究された現象の特徴に関して、一つの哲学的な仮定が存在し、それが現象についての妥当な知識を構成している。他にも、情報技術と人間、そして組織の関係に関して3つの哲学的仮定がある。ここではさらに、解釈と批判という2つの哲学を示し、実験的な例において考察する。複数のリサーチ展望が、IS調査において有効に使われれば、さらに得るものが多くなるだろうと述べている。

 IS研究には多様性がない。リサーチデザインでは、サーベイが支配的である(49.1%)。得られたデータは、断続的もしくは連続的な時間軸で分析される。前者はスナップショット、後者はプロセスに焦点を当てる。多くのIS研究は、自然科学由来の、実証的なオリエンテーションをとっている。リサーチ展望には3つの立場がある。第一に、物理的・社会的現実性だ。現象の調査に基づき、人間から独立した客観性に基づく。第二に、知識だ。知識の構築と評価、もしくはどのメソッドがふさわしいかを判断する。第三に、理論と実践の関係だ。Chuaの分類に従うと、研究の認識は3つに分かれる。これとリサーチ展望の3つを組み合わせて、IS研究を分析する。

一つには、実証主義だ。アプリオリな関係を前提とし、記述的な研究(ケーススタディを含む)と理論を下地にしているものを含む。IS研究ではこれが支配的である。人間から独立した客観的な世界を対象とし、研究者は中立な立場を取る。二つには、解釈主義だ。主観的・相互主観的に意味を作り出し、意味づけを解して現象を理解しようとする。社会を所与のものではなく、人間の意識と主体の延長ととらえる。人のふるまいの調査に役立つ。三つには、批評研究だ。「当然」という仮定に対して、批判的な立場を取り、現存の社会システムの矛盾を明らかにする。また、現状に対する気づきを促すものである。

 

 

 

コメント

実証主義のパースペクティブが、IS研究において支配的であるということだが、ケーススタディがここに分類されるということ、事例研究において客観性が求められるという意味で、予想がつくことではある。むしろ、主観的な意味づけから現象を理解しようとする解釈主義は、「how」を明らかにするものではあるが、主体的に関わっていくという意味で、アクション・リサーチが該当するのではないか。

この論文の時点では、実証主義が90%を占めている。情報技術・人間・組織の関係を扱うIS研究では、相互の理解が進んでいない状態では、システムを所与のものとして捉える実証主義(自然科学による)を取らざるを得ないのではないか。逆に、より情報システムと人間の距離が近くなれば、解釈主義や批評主義が増加するのではないだろうか。