Orlikowski, Wanda J. and Baroudi, Jack J., “Studying Information Technology in Organizations: Research Approaches and Assumptions,” Information Systems Research, Vol.2, 1991.

 

[要旨]

 本稿の目的は、情報システムを研究する際に用いられるいくつかの方法論が持つ含意について考察することである。

 本稿においては、1983年から1988年に出版された情報システムに関する155の研究を調査した。その結果、これらの情報システム研究は単一の包括的な理論に依拠していないにも関わらず、実際に観察された事象に関する知見をどのように正当化するかという共通の目的が存在することが明らかにされた。リサーチデザインや、時系列分析において複数のタイプが見られるものの、これらの研究には支配的な理論分野が見られるわけではなく、認識論的な差異が存在するのみである。これら認識論的差異は、Chuaの認識論によると、実証主義的、解釈主義的、批判主義的の3つに分類される。155の研究のうち、95%以上にあたる150の研究が実証主義に基づくものであり、そのうち113の研究が理論実証的なもの、37の研究が記述的なものであった。

 実証主義では、理論的命題を計測可能な変数を用いて定式化することと、その理論命題を実験や観察を通じて検証することが行われる(記述的研究は除く)。解釈主義では、自らを取り囲む現実世界との関わりのなかで、人々は主観的、相互主観的な関連要素を見出すとされており、一般化を志向するのではなく事象の深層に潜む構造を明らかにしようとする。批判主義では、既知とされている理論への批判的アプローチや、既存の社会的習慣への弁証法的アプローチが行われる。

 本稿においては、情報システム研究における実証主義、解釈主義、批判主義を分析するにあたり、Chuaが用いた分析体系を使用している。すなわち、物理的・社会的現実性について存在論、人間の合理性、社会的関係から、知識について認知論と方法論から、理論と実践の関係について実践における知識の目的という観点から考察している。

 実証主義では、発生事象は人間的要因とは分離して考えられ、研究者は客観性を保ちながらその事象を観測する。そして、経験的な理論実証により一般化が志向される。理論と実践との関係は機械的に捉えられており、一般的な法則が存在し、初期条件が操作可能であれば、望ましい結果を出すことが可能であるとされている。実証主義は経験的リサーチ分野において支配的な地位を占めるものであり、妥当性、再現性を確保することにより研究の信頼性を高めることできるが、一方でその限界として、現象に含まれる歴史的側面や事象が発生した文脈を軽視しがちであること、発生事象と人間とを切り離して考える傾向があることがあげられる。

 解釈主義では、社会は所与のものではなく、人間の意識と主観的な経験により構成されると考えられ、主観的な意味合いと社会政策的な意味合いが重要視されている。ここでは、発生した事象そのものよりも、それがなぜ起こったかについて関心が寄せられており、社会化の過程は推論によって検証可能なものでも、定量的に測定可能なものでもなく、それが発生している現実事象の中においてのみ理解されるとされ、研究者も観察対象の一部として含まれている。解釈主義は異なる社会現象を相互につなぐ要因を発見する一方で、しばしば外成的条件を調査しないこと、意図せざる結果を説明しないこと、組織や社会での構造的な衝突に着目しないこと、歴史的変化に関する説明を無視すること、といった欠点があげられている。

 批判主義では、調査中の事象について批判的な立場から研究がなされる。ここでは、社会現象は歴史的に構成されたものであるという事実が強調され、観察事象への参加者の理解を鵜呑みにするのではなく、その現象に対する参加者の理解を全体的な視点から批判的に評価することが求められている。これにより、観察対象が全体的な視点で捉えられるという利点がある一方で、研究者が自らのコンセプトや理論モデルに十分批判的ではなく、この分野での研究方法が確立されていないという欠点がある。

 

[コメント]

 現実社会で発生している事象を観察することによりある知見を得ようとする場合、採択する方法論により強み弱みが異なる。自分が追いかけているテーマの中で問題意識を解決するにはどの立場によるべきか。               (2004524日 藤井 資子)