小川進、「流通システムの新しい担い手:ユーザー起動型ビジネスモデル」、組織科学、Vol.35No.42002年、20-31ページ.

2004.5.24  折田明子

要旨

この論文は、ユーザ自身がイノベーションの担い手となる「ユーザ起動型」ビジネスモデルの事例として、エレファントデザイン社の「空想生活」及びエンジン社の「たのみこむ」を紹介している。

 エレファントデザインの構築には、コミュニティの概念とその2つの特徴、1)マイノリティがネット上では結束力を持って活動していること、2)一人の評価が一挙に他人に波及すること が前提となっている。市場標的としてのコミュニティ、インターネットの普及、そしてCGの活用という要素により、消費者は自分が望むデザインの商品を手に入れるというビジネスモデルが構築された。

 「たのみこむ」は、一度で覚えられる名前としてつけられた。登録ユーザによる掲示板の書き込みは、版権貸与と生産の可能性によって製品化が判断される。特に生産にかかる費用に対応して、価格と生産ロットが変動し、費用がかからないと予測されれば、ユーザの案は採択されやすくなる。

「たのみこむ」の立ち上げの意図は、中小メーカーやエンジン社自身を、消費者と直接つなぐというところにある。当初は企業が新商品の可能性を探ったり、消費者に頼んで購入させるサイトだったが、「マニア受け」する商品の方が売れたという実績から、マイノリティな嗜好を持つ層を有望顧客とするビジネスモデルに転向する。20003月には、企業が消費者の商品化依頼にこたえるサイトを立ち上げた。「たのみこむ」のベストシナリオは、消費者からニッチな意見が上がり、賛同票が集まり、限定受注生産のテスト販売を経た後に大量生産に繋がる流れだという。

 2社の例には7つの共通点がある。また、両社のビジネスモデルは、仕組みを通じて競争し、利益を生み出すことを想定している。

 ユーザ起動型ビジネスモデルは、流通システムにおいて3つの役割を果たす。第一に、ユーザが欲しいものを手に入れる機会を豊富にする。第二に、ユーザ・イノベーション実現のためのインフラを提供する。第三に、中小流通企業と中小メーカーに存在根拠と成長の機会を与える。ユーザ起動型ビジネスモデルを大規模企業が採用する可能性は低く、むしろ中小の流通企業とメーカーに機会を提供している。モノの流通だけでなく、流通システムにおける知識の創造と流通を促進するものである。

 

コメント

インターネット上ではマイノリティが集いやすく、かつ個別の発言の影響力が大きくなる、とある。マイノリティは確かにある場においては少数派だが、それぞれの存在が顕在化され、集まることにより、何らかの力を持てるのではないかと感じることがある。商品開発という目に見える形で実現したという意味で、この事例は興味深い。ネット上で結束力を持つとあるが、それは欲しい商品の開発というコアが存在するからではないか。ユーザ起動の成果物をどう想定するかによって、このモデルの有効性は変わってくると考える。また、ユーザ間のアイディア競争(ブラッシュアップ?)を取り入れるとしたら、どんなインセンティブが必要になるだろうか?