Markus, M.L. "Power, Politics and MIS Implementation," Communications of the ACM, 26, 1983, pp. 430-444.

2004.5.10 折田明子

要旨

この論文では、GTC社によるFIS(Financial Information System)の導入を事例に「抵抗」に対する3つの理論を検証している。抵抗についての研究は、よりよい戦略の実施と性かにつながるものだ。情報システム、組織、そして抵抗それ自体に関する仮定のもとに、3つの理論が構築される。第一の理論は、人間中心理論で、個人やグループの内的要因を理由とするものだ。第二の理論は、システム中心理論で、アプリケーションやシステムに引き継がれた要因を理由とするものだ。第三の理論は相互作用理論で、人間が持つ特徴とシステムが持つ特徴の相互作用を扱う。これは社会技術的な変形と、政治的解釈の双方を含む。

 合理的なマネジメント理論では、組織にはゴールがあり、それを達成するためにふるまうとされる。システムの目的は仕事を合理化することであり、経営的な意思決定を拡大するものだ。組織が合理的な場合、組織のメンバーはゴールを共有できている。非合理的な場合、グループによって異なる目標をめざす。部署がまずローカルなゴールを目指すように。

 この論文では、抵抗というものを、・システムを使わないようなふるまい ・システム設計者に目的達成をさせない ものと仮定するが、これらの意思がない場合も含む。FISGTC社の財務データを集め、集計するものだ。このシステムがバランスシートを作る。FISのタスクフォースは部署の会計士とやりとりをせずにセットアップをした。部署のユーザからは新しいシステムの利便性に気づかず、抵抗を続けた部署もあった。部署における管理会計と企業における財務会計のタスクの違いもあった。人間性の問題や、技術的な問題では抵抗の問題は解決できなかった。相互作用理論によれば、抵抗が対立するグループ間で生まれるなら、人間やシステムへの対処は意味をなさない。組織政治の観点から分析すると、部門と企業の間でパワーバランスが変化していることが分かった。FISプロジェクトでは部署の代表者ははじめから排除されていた。FIS導入の実施にあたり、抵抗が発生する理由を説明する上で、相互作用理論は利点を持つ。結局勝敗は明確ではない。相互作用理論においては、ユーザの参加が求められる。

 相互作用理論は、システム導入の実施にあたり、組織分析のモデルを構築した上でシステム設計をすることで、抵抗を抑える。実施者は自分自身も分析対象であることを認識し、分析者は抵抗を「打ち負かす」のではなく、抵抗の発生を避け、構造的に向かい合うべきだ。

 

 

コメント

相互作用理論とは、おかれた状況によって発生する相互作用を分析する、ということだろうか。GTC社の事例では、対立するグループという枠組みが見えてきたが、自分で何らかの事例を分析するとしたら何を変数として分析すればいいのだろうか?

人間については、うまくプロジェクトに巻き込むことも可能だとあるが、システム的な要因についてはなかなかうまくいかないとある。新しいシステムに対する抵抗は、客観的なものというより、政治的だったり感情的だったりするのかもしれない。