Markus, M.L. "Power, Politics and MIS Implementation," Communications of the ACM, 26, 1983, pp. 430-444.
[要旨]
本稿は、人々がMIS(management information system)の導入に抵抗する理由に関する3つの基本的な理論をケース・スタディによって検証し、MIS導入にあたっての提言をしている。
人々がMISの導入に抵抗する理由としては、@システムを使用する人々の内的要因に起因するもの(people-determined theory)、Aシステムデザイン等の外的要因に起因するもの(system-determined theory)、Bシステムとそれが組織内で使用される際の文脈との相互作用に起因するもの(interaction theory)の3つがあげられる。さらにinteraction theoryには社内における事業部間の相互作用に関するsocoiotechnical variantと、社内政治に関わるpolitical variant、2つの変異形がある。これらのベースにはそれぞれシステムや組織に対する異なった仮説が存在している。
People-determined theoryでは、情報システムの導入に対する抵抗の要因として、認知のスタイル、個人の特性、人間性といった内的要因をあげている。また、情報システムの目的については、合理的なマネジメント理論に依拠し、人々は意図した目標達成のために目的をもって行動するとの立場にたっている。また、組織的なゴールは全ての関与者によって共有されているとされており、情報システム導入に対する抵抗は、当初意図されていたユーザの望まれざる反応に起因すると考えられている。
System-determined theoryでは、情報システムの目的について、people-determined theoryと同様、合理的なマネジメント理論に依拠し、人々は意図した目標達成のために目的をもって行動し、組織的なゴールは関与者全てによって共有されているという立場にたっている。しかし、情報システムの導入に対する抵抗の要因として、技術の洗練度合いや人間工学的側面から見た利用のし易さ等、技術的なものに由来する要因をあげている。
Interaction theoryにおけるsociotechnical variantでは、抵抗の要因を事業部内従業員とシステムとの相互作用に求め、情報システムの目的は、ワークフローのみならず組織風土を変えるものという立場にたっている。また、political variantでは、抵抗の要因を、システムと社内の力関係の移動との相互作用に求めている。情報システムは社内のパワーバランスを変化させる傾向があり、パワーを新たに得る部門には受容されるが、パワーを失う部門には拒否される傾向があるとしている。
People-determined theoryでは、受け入れが拒否されたシステムについて全ての人々が受け入れを拒否するであろうことを示唆し、system-determined theoryでは、あるシステム導入が受容されるか否かをシステムの技術的な側面から示唆するに留まる。しかし、interaction theoryでは、同一のグループに別システムを導入した場合の反応の違いを説明することが可能となり、MIS導入にあたり、実務面で有用な多くの含意を含んでいる。MIS導入によって既存のワークフローのみならずパワーバランスが変わる場合に人々はそのシステムに対して抵抗を示すのであり、それを回避するためには、MIS導入前にまず組織的な問題を解決する必要があることを示唆している。
[コメント]
MIS導入にあたり、システムが使用される組織内での文脈がシステム導入の成否を握ることを端的に示した単一ケース・スタディである。実務家にとっては新システム導入に際して抵抗を回避するための知見を、研究者にとっては単一ケース・スタディの中で複数の論理命題を提示し、どれが最も確からしいかを確かめるという研究方法が持つ可能性を示唆している。
(2004年5月10日 藤井 資子)