國領二郎、『オープン・ネットワーク経営』、日本経済新聞社、1995年.

2004517日 佐々木裕一

 

企業は「囲い込み」型経営から「オープン」型経営への移行が必要、というのが本書の主たるメッセージである。ここでいう「囲い込み」経営とは独自仕様の外部とのインターフェースを持つことで、人材やベンダやチャネルを囲い込み、多角化・総合化を志向する経営のことを指す。一方、「オープン」型経営とは標準的な外部とのインターフェースを徹底的に利用し、外部資源を活用することで自社の資源を中核業務に集中させる経営のことを指す。

筆者はオープン型経営への移行必然性の要因として4つを挙げている。第一はやや特殊要因であるが、80年代の米国の経済環境が前半において高金利、後半において不景気だった点である。これにより資産を有効活用するためのM&A旋風が起こったからである。第二は商品の高度なシステム化と開発サイクルの短期化である。完成品メーカーにおいては高性能で安価な部品を短期間で組み合わせることで商品を提供することが必要とされてきたらからである。第三はサプライチェーンのグローバル化である。第四は物流合理化ニーズである。多頻度小口配送にはメーカー別の物流では対応できず、物流機能に特化した共同配送サービスなどが求められてきたということである。

またこれらの要因の共通的な背景にある点として、企業間システムや通信システムがいずれも集中処理から分散処理へと移行し、初期の設備投資が下がったことと囲い込んだ企業が増えても運用コストが逓減しなくなったことによって囲い込みのインセンティブ自体が下がったということも挙げている。

実はオープン型経営には二類型ある。つまり少数の企業が商品やサービスの流れに沿って業務の緊密な調整を図るツールとして利用する「戦略提携型」と情報通信システムによって多くの売り手と買い手を仲介する場が提供される「電子市場利用型」である。筆者の仮説としては、オープン型経営では後者の「電子市場利用型」が中心になるというものだったが、実際にアメリカでは「戦略提携型」のほうが中心になってきたという点は興味深い。それゆえ本書のタイトルもオープン・ネットワーク経営となっている。

 

     論点・コメント

     筆者が製品開発・デザイン論、経営情報システム論、情報システム開発デザイン論というところから、その概念を拡張させ、企業や組織を一つのモジュールとしてとらえ始めた時期の著作として興味深い。

     ただし、初期の分析フレームゆえ、まだその分析が粗い点は否めない。たとえば、80年代のIBMの衰退はオープン型経営で説明できても、90年代のマイクロソフトの成長の説明はオープン型経営ではできず、マイクロソフトを例として使うのも好ましくない。確かに90年代前半までのマイクロソフトはオープン戦略といえるが、その後OSから表計算やワープロなどのアプリケーション・ソフト、ブラウザ、メーラーなどをクローズドな形で統合化し、拡大かつ高収益化していった経緯がある。マイクロソフトの成長はオープン⇔クローズドという軸よりも、ネットワークの外部性効果のほうを強く意識した意思決定の結果である(ただしこの95年という時期にインターネットのここまでの普及(=ネットワーク外部性が働きやすくなる)を見越せというのが無理な話ではある。コミュニティ・アライアンスもオープンソース以外の分野の説明力には乏しく同罪である)。