Hevner, Alan R., Salvatore T. March, Jinsoo Park and Sudha Ram, Design Science in Information Systems Research, MIS Quarterly, Vol. 28, No. 1, 2004, pp.75-106.

 

[要旨]

行動の科学(behavioral-science)は,「開発と正当化(development and justification)」,「真実(truth)」を探求するのに対し,設計の科学(design-science)は「建造と評価(building and evaluation)」,「効用(utility)」に価値をおいている。筆者は双方について以下のような点を指摘しつつ,行動の科学と設計の科学双方の情報システム研究における存在意義を説明し,両者の補完性を強調する。すなわち,前者については,理論を強調しすぎて技術的可能性を適切に見抜いて予見することに失敗し,結果として時代遅れな効果のない技術を扱う理論や原理になりかねない点,後者については,技術的な人工産物を強調し過ぎて適切な理論づけを維持できずに,現実の組織に無用のうまく設計された産物をつくりだしてしまうことになりかねない点である。情報システム研究では,技術に対して,前者の姿勢である受身的反応と後者の姿勢である積極的反応の双方がなくてはならないと筆者は強調している。

 筆者はMarchSmith1995)による2つの設計プロセスと4つの設計産物,すなわち,「建造と評価のプロセス」と,「コンストラクト・モデル・メソッド・インスタンスの作成」を用いて,情報システム研究のフレームワークについて以下のような文脈を提供しながら説明する。それによれば,意図的な人工産物はこれまで未解決の問題に対応するよう建造され,その効用によって評価される。コンストラクトは,言語を提供し,それによって問題と解決が定義され伝達され,モデルは,コンストラクトを使って設計問題とその解決スペースを描写し,両者のコンポーネント間のつながりの理解を助ける。メソッドはプロセスを定義し,問題解決のガイダンス,解決スペースの調査方法を提供する。インスタンスの作成は,機能するあるシステムにおいて,コンストラクト・モデル・メソッドが実装されうることを示し,研究者はそこから人工物が現実に及ぼす影響と利用者がいかにそれを使用するかについて知ることができる。筆者は,行動の科学と設計の科学を合わせた情報システム研究の理解,実施,評価のための概念的なフレームワークを整理し図示(P.80)している。さらに,7つのガイドライン(人工産物設計,問題の妥当性,設計評価,研究意義,研究精度,探求プロセス設計,研究のコミュニケーション)を示し,これらのガイドラインを最近の3つの研究文献に応用し,より品質の高い設計科学の研究に向けた取り組みについて,広まりを持つ情報システムコミュニティの文脈で分析している。

 

[コメント]

実際に動かして,設計と効用の乖離を縮小させながら人工産物の設計にフィードバックさせていくことが難しい,例えば政策といった領域では,ここで説明される方法論の強みが発揮されない。既に動いているものの観察を通じて乖離を認知する,設計にフィードバックさせていく,フィードバックを実装して動かして検証する,といった周期が数ヶ月〜数年といった比較的短時間で実施できる分野と,数年〜十数年といた長時間を要する分野では,この方法論の効果は異なろう。自身のリサーチクエスチョンにもっとも適する方法論を探ることの重要性について,Yin同様,認識させられる。

20041025日 坂井 健太郎)