Trevor J. Pinch and Wiebe E. Bijker “The Social Construction of Facts and Artifacts: Or How the Sociology of Science and the Sociology of Technology Might Benefit Each Other”
Thmas P.Hughes “The Evolution of Large Technological Systems”
2004.6.7 折田明子
要旨
Bijkerの論文は、技術と科学それぞれにおける社会学的視点が有用な出発点をもたらすと主張し、これまでの文献の紹介、2つのアプローチ、詳細の検討の3部で構成されている。
参考文献の分野は3つに分類できる。第1には、社会科学だ。科学的な知識が社会的に構成されているとして、経験的アプローチがとられている。第2には、科学と技術の関係だ。哲学者は科学と技術を分離し、発明者は技術的発明が科学から発生すると言う。今日の多くの研究者は、科学と技術は一枚岩であり、社会的文化を構成するとしている。第3には、技術だ。経済学者によるイノベーションの研究では、プロセスが単純なリニアモデルで表される。その他、技術史や技術社会学があげられる。
技術と科学に対する2つのアプローチが提示されている。一つには、EPOR(経験プログラムの相対主義)である。科学的知識の社会構造を、「硬い」科学で扱うもので、現在の科学開発に対する経験的な研究と対立する理論の研究が特徴だ。科学的発見に対して高い自由度を持ち、自然から社会に対してそれを説明するという段階を踏むが、一連の流れを近似したメカニズムと関連づけることは今のところできていない。二つめは、SCOT(技術の社会構造)である。人工物開発のプロセスには、バリエーションと取捨選択があるとして、多方向モデル(cf.イノベーションにおけるリニアモデル)を示す。
これらのアプローチを並行してみる。発見に対する解釈の自由度は、EPORにもSCOTにも共通する。さらに、SCOTは技術的人工物を文化的に構成し、解釈する。異なる社会グループは、異なる解釈を人工物に対して持つ。技術のタスクは、人工物の内容をより広く社会的・政治的環境に関連付けるという意味で、科学に似ているように見られる。この側面は科学的研究にはみられなかった。SCOT記述モデルは、現実の技術的内容をより広い環境に結びつけるものである。
Hughesの論文は、「技術システム」を定義した上で、その進化パターン1870〜1940年のエジソンやベルらを例に分析している。技術システムとは、社会的に構築され、また社会を形成するものであるとされる意味で、自然のシステムとは対になる。技術システムには、物理的な人工物(発電機など)と物理的でない人工物(法制度など)という要素がある。これらのシステムは相互作用するため、各コンポーネントの特徴はシステムに由来している。技術システムは、人工物と人間の運用によって制限を受ける。なお、人間は』システムのコンポーネントではあるが、人工物ではない。人間がヒエラルキー構造を好むため、システムもヒエラルキー構造をとっていた。システムは入力と出力を持ち、サブシステムは内部の入出力でつながっている。
技術システムの進化のパターンとして、発明、展開、革新、さらに発明(技術移転、技術様式、成長・競争・合併・惰性)というフェーズが提示されている。発明家は、独立型、管理者型、財務型と分離できる。特に、最初の発明段階において、発明者が組織から独立しているか否かは、問題設定に影響を及ぼす。
コメント
前者は、科学と技術は分離しているか?という問いにはじまり、2つのアプローチを提示している。いずれも人工物を開発する段階で、科学的知識が社会や文化に結び付けられるとしている。興味深いのは、開発における問題解決をどの時点で安定させるかの部分だ。
後者は、発明家の社会的な位置づけを分析しており、人工物が社会的なコンテクストで存在する以上、発明家の置かれた立場や姿勢がその設計や開発に影響を及ぼすという意味で興味深い。