Pinch, Trevor J. and Wiebe E. Bijker, “The Social Construction of Facts and Artifacts: Or How the Sociology of Science and the Socioligy of Technology Might Benefit Each Other,” Bijker, Wiebe E., Thomas P. Hughes and Trevor Pinch(eds), The Social Construction of Technological systems, The MIT Press, 1987, pp. 17-50.
Hughes, Thomas P., “The Evolution of Large Technological Systems,” Bijker, Wiebe E., Thomas P. Hughes and Trevor Pinch(eds), The Social Construction of Technological systems, The MIT Press, 1987, pp. 51-82.
[要旨]
<The Social Construction of Facts and Artifacts>
本章においては、経験的な科学的研究と技術の分野に社会構成的な考え方を適用しようとしている。本章における主要な議論は、科学的な研究と技術分野における研究は相互によい影響をもたらすということである。ここでは、技術が社会を変えるといつ立場ではなく、技術を社会的な関係性の中で構成されていくものとしてみる社会的構成主義の立場から、自転車の技術史をテーマに統合的な社会構成主義者のアプローチは分析的でもあり経験的でもあるという本質的な問題に取り組んでいる。
科学社会学におけるアプローチ方法としてEPOR(the Empirical Programme of Relativism)とSCOT(the Social Construction of Technology)の二つがあげられている。EPORはハード・サイエンスにおける科学的知識の社会構成主義を明示するものであり、同時期の同じ領域における経験的な科学的発展の研究と科学的論争の研究に重きが置かれる。
一方SCOTは未だ流儀が確立されていない全く新しい分野であるが、そこでは技術的な人工物の発展過程がバリエーションと選択によって記述される。自転車の歴史を例にとると、自転車という同一の人工物に関して、その利用者が所属する社会集団によって受け取り方が異なる。そして、これらの社会集団の相互関係によって、自転車の改良・発展が進んだことがあげられる。つまり、異なる社会集団に属することに起因する自転車の使用形態をめぐる技術的問題の捉え方の違いにより、解決すべきとされる問題も異なってくる。今ある進化の道筋は唯一無二のものではなく、他の方向に進む可能性があった。
<The Evolution of Large Technological Systems>
本章においては、技術システムの発展のパターンを扱っている。技術システムとは、複雑で厄介な問題に対する解決策から構成されるものであり、社会的に構成され、形成されるものである。技術システムには、電力システムにおけるタービン発電機のような物理的人工物のみならず、組織や投資銀行、書籍、大学の教育プログラム、はては立法機能までも含まれる。
物理的なものであれ、そうでないものであれ、技術システムを構成する人工物は相互に作用しあいながら技術システムが最終的に目指すものを達成する。技術システムを構成する人工物の相互作用はシステムに由来する。そのため、技術的課題の解決に社会的要素を用いたり、社会的問題解決に技術的要素を用いたりしながら技術システムを構築していくシステムビルダーが必要となる。
技術システムの発展は段階的(発明、発展、革新、技術移転、成長・競争・結合の5段階)に進む。これらの段階は連続的なものではなく、重複したり後戻りしたりすることもある。そしてそれぞれの発展段階ごとにその段階に適したシステムビルダーが活躍をする。また、システムが成熟するにつれ、技術システムにはスタイルとモメンタムが備わってくる。
[コメント]
PinchとBijkerの論文では、技術は社会的に構成されるという立場がとられている一方、Hughesの論文では、技術システムの発展過程を考察するなかで、技術的観点と社会的観点の相互作用が必要なことが述べられている。人間社会と技術との関わりは複雑で、人間の認知能力も限られているなかで、新技術の社会受容過程を描いてくにはどうすればよいのか。
(2004年6月7日 藤井 資子)