Benbasat, I., Goldstein, D.K. and Mead, M., “The Case Research Strategy in Studies of Information Systems,” MIS Quarterly (11:3), 1987, pp. 369-386.
[要旨]
1.ケースリサーチの定義(p.370-371)
標準定義はないとし11の特性が挙げ(Table 1.),アプリケーション評価と実地研究の2つを対象から除外している。
2.ケースリサーチの実施(p.372-374)
ケーススタディの有効性についてYinとBonomaによる議論を取り上げる。Bonomaによれば,ケース戦略は仮説の作成と検証の両面で役割を果たしうるとされている。ケースリサーチの理解と実施を助けるものとして,1)分析単位,2)単一vs複数ケース設計,3)現場の選択,4)データ収集方法を示している。
3.事例に基づく調査に対する批判(p.374-382)
3-1.4つのケースリサーチ研究(p.375-378)
@Markus,ADutton,BPyburn,COlsonを取り上げ,各々の強みと弱みを示している。
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研究目的 |
強み |
弱み |
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@Markus |
何故,システムが片方の工場で使われ,他方の工場ではつかわれない(なかった)のか? |
分析対象の単位(工場)が同一企業であることで内部妥当性が強まる,研究の機会のユニークさ |
データ収集方法に関して詳細を欠く点(読者に推察を許す),収束と妥当性に向けて使用された付加的なデータ資源は?(記憶の非一貫性の問題) |
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ADutton |
(運用過程に対する)技術的にみた制限と,組織からみた制限についての考察 |
運用過程に関する詳細さ(読者が独自の解釈を行なえる) |
本来の調査目的が明示されていない(何故その場所を選んだのか?) |
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BPyburn |
何故,特定の方法論がある条件設定ではうまく機能するのに,ほかの設定では機能しないのか? |
データ収集に先立って明確な調査目的を設定,MIS計画を分類するスキームの提案 |
DuttonやMarkusでみられる詳細な説明がない(読者は筆者の解釈に頼るしかない) |
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COlson |
システム開発機能の集中化と利用者組織での設置について |
ケース観察に基いた結論を説明する試み |
観察対象企業についてほとんど知らされていない,結論は2社のサンプルのみに基づく |
※懸念されるのは調査するものの主観
3-2.ケーススタディの全般的な評価(p.375-378)
IS事例の研究者は,彼等の題目が適合する場所についてはっきり示さず,彼等の調査目的を納得させることをしてこなかった。読者は,十分な情報を提供されず彼らの成果を評価することができてこなかった。大半のものは独立した事例で,1回限りの研究に見える。
[コメント]
本稿では,1)ケースリサーチ手法の性質を明らかにする,2)IS研究で利活用される根拠を説明する,3)過去5年間のIS研究における利用のされ方をみる,4)改善にむけた提案を行なうことを目的としている。Yinの文献と並行して読むことで,各ケースがもつ特殊性が時に強みに,逆に時に弱みになりうる点について確認できる。この点に関しては,全般的な評価の箇所で「1回限りの研究に見える」点が指摘されている。個人的には,探索的にケースを研究することが仮説の導出や検証に結びつく効果について,より知見を深めていきたい。ケーススタディにおける客観性とは何か?アクションリサーチでも主体的に携わりながら客観性を保持することは可能なのではなかろうか。
(2004年5月10日 坂井健太郎)