Barnard, Chester I., The Functions of the Executive, Harvard University Press, 1938.
邦訳:山本安次郎・田杉競・飯野春樹訳『新訳 経営者の役割』ダイヤモンド社, 1956
2004.6.14 折田明子
要旨
本書は、協働と組織の特徴を明らかにした上で、公式組織における管理者の職能を提示するものである。
第一部では、協働体系に関する考察を行っている。まず、「公式組織」を「意識的で計画的で目的をもつ人々の相互間の協働」と定義している。協働体系の参加者としての人間は、機能的な側面と一人の人間としての側面を持ち、組織とはこうした側面のうち一つを統制した結果であるという。個人は目的を持つと同時に制約を持つため、目的を達成し制約を克服するために協働する。協働の特徴は次の通りである:@個人の選択力には限りがあるA生物的な要因の克服のために協働するB全体としての相互作用が発生するC協働の永続性(組織の存続)はその有効性や能率に依存するC協働の存続は、環境との関連や個人間の満足の創造・分配による。それぞれの過程や組み合わせから失敗が生じるが、管理者によって有効な適応が確保される。
第二部では、公式組織の理論と構造について述べられている。組織とは、「調整された人間努力の非人格的な体系」とされる。組織の要素として、@協働意欲A目的(協働的側面・主観的側面)B伝達(コミュニケーション) の3つがあげられる。組織は目的を達成できなければ崩壊するが、達成することによって解体もするため、新たに目的を採用していく必要がある。組織には、「公式組織」のほか「非公式組織」が存在する。これは、きまった構造を持たないが、公式組織に先行する条件であり、具体的には公式組織における伝達機能(例:コツを知る)を果たす。
第三部では、公式組織の諸要素が説明される。@専門化:協働の目的成就に必要である。A誘因・説得:組織に対して個人を誘引する。説得の段階には、強制、合理化、教導がある。B権威:公式組織における伝達の役割を果たす。C意思決定:個人の意思決定と組織的意思決定がある。意思決定の中心的な役割を果たすのは「制約的(戦略的)要因」であり、コントロールをかけることで目的を新しいレベルにつなぐ。
第四部では、協働体系における組織の機能として、「管理」について述べられている。まず管理機能については、伝達体系が不可欠であり、組織を継続的に活動させるための管理業務が必要であるとしている。伝達体系には、組織構造はもとより、非公式組織が組み込まれており、目に見えない事実を伝え責任構造に対する好影響を与える役割を果たすとされる。管理過程については、組織の有効性においては統制が重要な役割を果たすといい、協働体系は四重の経済によって存続しうると書いている。管理責任の性質については、「リーダーシップ」および道徳的要素が取り上げられる。実践的能力よりも、リーダーとしての責任が重要な役割を果たすとしている。リーダーはいわば起爆剤としての創造機能を果たす。リーダーシップの2つの要件は、第一に局部的・個人的・一時的な優位性、第二に一般的・主観的な優位性(例:決断力)があげられる。組織の存続はリーダーシップに依存し、その良否は基礎にある道徳性から生ずる。
コメント
個人的な制約を克服するために協働し、協働を存続するために制約的要因が必要となる…何らかの外的条件がかかることで、活動が発生し、進歩し継続していくということは新たな発見だった。組織は非人格的体系と定義されているが、非公式組織という概念やリーダーシップには人格的要素(目に見えない伝達、道徳性)が含まれていることも興味深い。