Carliss Y. Baldwin, Kim B. Clark, “Design Rules Vol.1”, The Massachusetts Institute of Technology, 2000. (安藤晴彦(訳),『デザイン・ルール』,東洋経済新報社,2004年.)(第2部以降)

 1964年、IBMはシステム/360を発売。初のモジュール型コンピュータ・ファミリーは同一オペレーティング・システムで稼動し、44 台の同じ周辺装置を使用できることとなった。これにより、顧客別の固有のコンピュータ、ソフトウェアという考え方に決別した。さらに1967年にかけてシステム/360の設計に加えて、製造し、配送し、販売するというサプライチェーンもモジュール化されていった。

 次なる経営陣の作業はこの製品設計と関連タスクのモジュール化を基盤に、儲かる企業を作ることであった。つまり、新たなタスク構造の周囲を「契約構造」(ある集団的事業体を組成し、外部環境との取引の組織かに用いられる契約の集合で、労働・原材料・資本の供給者との合意や、顧客・株主・経営者との合意や政府との合意を含むもの)(p.231)で囲むこと。そしてそれらは1970年までにほぼ完成した。

 しかしなぜ、コンピュータ設計のモジュール化が進んだのだろうか?それは設計のモジュール化のもたらす純オプション価値が検証コストに比べて上回ることが多かったからだ。別の言い方をすると、モジュール化による純オプション価値と検証コストのバランスが意思決定の基本だ。ここで注意すべきは全てのモジュールは同等の価値を持つわけではないということ。さらに6つのモジュール化オペレータのうち、どれを戦略的に追求するかも事業収益の観点から重要である。たとえばIBMに比べ、アーキテクトのリソースに乏しいDECは「削除」オペレータに注力し、成功した。

 このように製品設計のモジュール化が進むことで、モジュール単品で強みを持つ企業が出てきたことが、モジュールクラスター出現の基礎にあるが、最終15章では投資家の心理も要因にいれた動学的分析を行っており、説得力を増している。

 

          コメント・論点

          論文の書き方としては、コンピュータのモジュール型設計進化とコンピュータ産業構造変化の歴史を綴る第2部の3章と、それ以降のなぜそのような設計進化が起こり、その設計進化がコンピュータ産業の構造にどのような影響を与えているかの説明部分という書き方は手本になる。

2004104日 佐々木裕一)