Baldwin, Carliss Y., Kim B. Clark, Design Rules: The Power of Modularity, MIT Press, 2000. (邦訳:安藤晴彦訳,『デザイン・ルール―モジュール化パワー―』,東洋経済新報社, 2004

2004.10.04 折田明子

要旨

 第二部では、初期のコンピュータ設計からIBMのシステム/360、そして事業体に至るまでの設計過程を説明している。

 コンピュータ設計の領域では、意識的な努力によってモジュールが生み出される。多くの設計サイクルを経た積み重ねは、歴史的・知的なプロセスだった。1944年から1960年を「先モジュール化時代」と位置づける。この時代のコンピュータは、相互依存型の設計であり、モジュール化は事実上存在しなかった。だが設計者の頭の中には、システムから構成要素への分離、他の構成要素との交換、解決策の抽出、他のシステムへの転用と言ったモジュール化が思い描かれていた。1944年当時のENIACと比較すると、ノイマンをはじめとするBGVによるタスク構造は単純化されており、彼らは設計の6つの基本要素(メモリ、制御、演算ユニット、入力、出力、記憶)を定義した。このレポートは、コンピュータを、専門機能を持つパーツの相互作用による複合体と定義し、コンピュータ設計の工学的問題を類型化した。大量生産に向けた合理化はIBMで進み、設計レベルでのモジュール化が行われた。1958年に標準モジュールシステム(SMS)が導入され、設計者たちにデザイン・ルールを課した。SMSは人工物の単なる分解概念ではなく、タスク構造の効率的なモジュール化だ。

 これらの概念が集結したのが、IBMのシステム/360だ。背景となる1960年までは、ユーザが新技術を利用するには、旧式なシステムをご破算にして全て移さねばならず、危険をはらむものだったため、ニーズは増えたものの設計者はジレンマに悩んでいた。システム/360アプリケーション・ソフトウェアの互換性を達成し、上位レベルの変化までをももたらした。システム/360の互換性のための可視情報が決定され、デザイン・ルールとなった。グループが構想した新製品群は、異なる全部品が一つのシステムとして機能することを期待された。実地は困難だったが、この計画は概ね機能した。1966年までにモジュール化アプローチのリスクが分からず、過小評価が明らかになった。プロセスの障害は克服され、1966年待つにはスケジュールが回復した。社内における知識と労力の効率的分割と、並行作業のためには、設計から製造、配送、販売するシステムもモジュール型となった。

 システム/360は、設計者チームに制限されない設計アプローチを実証した。代わりに、アーキテクトがデザイン・ルールを指定した。変化の許容性が含まれた設計は、1960年代半ばのコンピュータ業界にとって新しい概念であり、その後の流れを作った。モジュール型構造は、サブシステムの相互依存性を解放するため、イノベーションを枠組みに容易に取り込むことが可能になり、新しい「集合」を創造する。こうした変化はシステム内部にとどまらず、契約構造(タスク構造と結びつく)の創造に結びついた。

 

コメント

モジュール化以前は、新技術を利用することが即ち「全部取り替え」であり、コストとリスクを負うものであったが、モジュール化によってそれぞれの機能の足並みを無理に揃える必要はなくなった。興味深かったのは、モジュール化によりシステム(例えばS/360)が相互作用から解放される一方で、上位システム(例えば契約)に影響を与え、さらに事業体の設計と結びつくという構造である。